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あおはとのゲーム雑記。元々AceCombatブログでしたが今はいろいろ・・・
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ベルカ戦争を駆け抜けた鬼神の姿を、登場人物の視点から振り返る

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REVEAL ONE
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1995/5/19 15:30 晴天

時刻は昼下がり。
太陽の光は包み込むように暖かく、絶好の昼寝日和だった。

≪サイファー聞こえるか?いい眺めだ≫
俺達が飛ぶ空の上は青く澄み渡り、下は若い緑の丘を縫うように透明な川が蛇行し、それを横切るように俺達の行く道が真っ直ぐに伸びていた。
絵にかいたようなのどかな風景。
右隣に並ぶ両翼が紺色にペイントされたイーグルも景色に見入っているのか、珍しく返事もせずにただぼんやり浮かんでいた。
≪ここから見ればどの国も大して変わらん≫
俺の呟きに同意するように、少し遅れてサイファーの機体がくるりと一回転する。
そんな呟きに釘を刺すように、イーグルアイからの通信が入った。
≪ベルカの防衛ラインはすぐそこだ。敵の攻撃を避けながら地上部隊を撃破しろ≫
≪りょーうかい≫
ヤレヤレと肩をすくめながら、俺はガルム1の分まで返事をしておく。
仕事熱心なことで。

ターゲットに向かって真っ直ぐに飛行する傭兵たちの間で、無線が飛び交う。
≪機体の調子がいい。悪いが今日のエースは俺がもらうぞ≫
≪よし、今晩は久々にお前のおごりで飲ませてもらうとするか≫
≪サイファーやピクシーばかりじゃ悪いからな≫
≪へッ、ぬかせ≫
前回に引き続いてベルカの戦線の後退を狙う本作戦は、今までの作戦に比べたら気楽な内容だった。
傭兵たちの軽口はその現われだろう。

傭兵仲間たちの間で撃破スコアの張り合いをするのは、どこの基地でもよくある光景だった。任務が終わり、地上に戻ると決まって戦闘機乗りの間で撃破数の自慢大会が始まる。
自慢や嫉み、あてつけなど様々なヤジが飛び交うが、それらの言葉は裏返せば全て、傭兵世界での賛辞にあたる。そういった言葉をかけられることそのものが、傭兵として腕を認められた証になる。

そんな奴らの中でも、ガルム隊である俺たちの戦果は、事実群を抜いてよい成績だった。
だがサイファーはそういった場には興味がないのか、面倒なのか、一切顔を出さない。
あいつと顔を合わせるのは、前回のように機体の傍、格納庫の中、または強制参加であるミーティングやブリーフィング時くらいのもので、食事時も、気づかないうちにやってきては、気づかないうちに食べ終わって出ていく。
傭兵としての栄誉にも興味がなく、金に執着しているわけでもない。
―――まったく、つくづく掴みどころのない野郎だった。

本人の口から戦果のお披露目がないためか、『片羽』エピソードのインパクトが強かったのか、今まで傭兵どもの注目は良くも悪くも俺の方に集まっており、なかなか一番機であるサイファーの存在が注目されることはなかった。
だが、どんな作戦だろうが、どんな状況下だろうが、常に自慢屋やベテランパイロットの上を行くサイファーの成績は、否応なしに注目の的となりつつあった。
サイファーほどの腕を持つ飛行機乗りならば、当然の評価ではあるが。
≪人気者だな、相棒≫
俺も周りに倣って相棒を冷やかしてみせるが、当の人気者のイーグルは、ゆるやかに高度を上げ続けるだけで、こちらを気にする気配すらなかった。
≪へ、気取ってやがらァ≫
傭兵の毒吐きに、俺もこっそり肩をすくめる。
≪それにしてものどかな風景じゃねえか。邪魔なのは俺たち戦争屋ってことだな≫

雲ひとつない青空、青々と茂る緑、豊かな水源。
こんな平和な風景を持つ国が戦争をやりたがったなんて、戦争に参加した当事者でもなければ信じられない。
俺たちさえ飛んでいなければ、これが平和の姿というものなんだろうな。

だが、傭兵である限り、俺たちにはやるべきことがある。
≪景色に見とれるのは俺たちの仕事じゃない。気を引き締めて行くぞ、相棒≫
俺は自分自身のケツを押すために、スロットルを全開にした。




ろくに体制の整っていないベルカの地上部隊を相手に、作戦はあっけないほど順調に進んだ。
混戦した無線によると、どうやら司令官はいち早くトンズラこいたらしい。どこの戦場にも小賢しいだけの役立たずは、探せばいるものだ。
だが、残った者の士気は意外に高かった。
≪手負いの獣か≫
戦力で勝っているからと油断していると痛い目を見そうだ。
俺は慎重に上昇しては降下し、対空火器を潰して回った。
サイファーは最初のほうこそ機銃を使って敵戦線をかく乱し、倉庫やハンガーと思しき建物を爆撃していたが、敵無線の混戦が激しくなってきた頃から、上空に上がっていったっきり下りてこなくなった。
俺は聞こえるのも構わずに舌打ちする。

やがて、今までの作戦に比べると拍子抜けするほどあっさり驚異の排除された空に、連合軍の輸送機が悠々と侵入してくる。
だが隣に浮かぶサイファーのやる気のなさっぷりは相変わらずで、作戦の後半からは高高度からほとんど機体を動かしもせず、ミサイルの一発すら撃っていなかった。
コックピットで寝てると言われても不思議じゃないほどダレた飛行。
おい相棒、生きてるか。
そうあてつけようとしたときだった。
空が光った。その光は、グラティサントで見たその光に似ていた。
―――直後。

ドン

腹に響く重い音をたてて、誘導していたはずの輸送機が爆発した。
≪なんだ?何が来た?どこから撃ってきやがったんだ!≫
味方の混乱した無線が飛び交う。
俺も突然の状況に叫ぶ。
≪何が発生した?AWACS、状況を!≫
ふと気づけば、いつの間にか隣を飛んでいたはずの相棒の姿がない。
まさか、落とされたのか?
だが、そんな可愛い想像が現実のはずもなく、あいつは腐っても傭兵だった。
輸送機の周りを円を描くように旋回し、目視とともにあたりを警戒している。
あいつにとっても未知の事態なんだろう。

―――誰もが混乱していた。

≪待て・・・来た!作戦本部より緊急入電!≫
≪状況、敵の長距離攻撃。当空域は敵の完全射程内にある≫
≪遅い!どこを飛べばいい!?≫
≪敵照準予測座標をレーダーに転送する。全機、攻撃を回避し空域を離脱せよ!≫
≪簡単に言うなよ!あの攻撃はなんなんだ!!≫
≪どこに来るんだ!?≫
≪北だ、北が近い!≫
≪砲撃来るぞ、避けろ!≫
入り乱れた無線が鳴り止まぬうちに、再び空が光る。
≪う・・わぁああああAAHHHHHH********!!!!!≫
誰かの悲鳴が、怒号が無線を占拠しあう。
≪4番機が消えた!≫
≪6番機もいないぞ!!!≫
俺はヘルメットの下で悪態をつく。
≪クソッ、生きて帰るぞ!≫
そのときだった。視界の隅を、ミサイルが1発、派手な煙を引きながら真っ直ぐにぶっ飛んでいった。
≪こんな状況で敵の攻撃か!?≫
すぐさま旋廻しようとした俺の機体の真横に、見慣れた機体が割り込む。
サイファーだった。
危うくぶつかりそうになったほどの間近な距離で、サイファーがコックピット内でなにやら手振り身振りをする。
先ほどのミサイルを指して、親指で行けという仕草をする。
”南だ”
ようやくハッと気付く。サイファーは手のサインで会話しようとしているのだ。
”北ではなく、南だ”
俺は思ったより混乱していたらしい。サインに気付かないほど混乱しているとは。
しっかりしろ、ラリー・フォルク。
≪了解、相棒≫
そして入り乱れる無線に負けないように、声を張り上げる。
≪各機聞け!南だ!南に退避しろ!≫
だが、一度広まった混乱はそう簡単には収まらない。
≪ヘイロー10からの応答がない!≫
≪どうなってやがる、ミサイルでもない≫
すでに南に向かって飛びだしている俺たちの後方で、迫り来る未知の恐怖に、巣をつつかれた蜂のように混乱する味方機たち。
≪ガルム隊、敵長距離攻撃の照準予測座標はレーダーで確認しろ≫
≪だそうだ、各機レーダーを見ろ!レーダーで避けるんだ!≫
そう怒鳴りあっている間にも、どこからやってくるかもわからない光が、名もわからない仲間の羽を次々ともいでゆく。
≪ヘイロー5!応答しろ!≫
もはや悲鳴なのか怒号なのか泣き言なのかわからない悲壮な声が無線から垂れ流され続ける。
≪慌てるな、レーダーから目を離すな!≫


そんな混乱の中でも、右斜め前を飛ぶサイファーは落ち着いているように見えた。
注意深くレーダーを見ながら、照射位置を余裕を持って回避する。
時々あの紺色の両羽をゆすったりしながら、サイファーは確実に南へと進み続けていた。

落ち着け。
大丈夫だ。

―――そう、語りかけられているようにすら感じた。
そう、落ち着けば大丈夫。落ち着いてレーダーを見れば回避できる。
そうして広範囲レーダーを見たときだった。
前方にECM。ジャミング空域発生。
≪クソッタレが!≫
これでは、レーダーを見て回避することができなくなる。
一体何人の仲間が帰ることができるのか。
この妨害で、その確率はぐんと低くなった。
そのときだった。
前をひらりと何かが横切った。
―――アフターバーナーを炊いて飛翔する、ガルム1の機体だった。
危険この上ない行為に、俺は思わず叫んだ。
≪サイファー!≫
曰く、ベルカによるレーザー兵器の攻撃は、先行するサイファーに集中し始めたように見えた。
だが、加減速、ハイGターン、誘導を上手く使って、サイファーはまるで蝶のようにひらりひらりとその光をかわしていく。
そうしてレーザー兵器の巻き添えにならにようにしているのだろうか、ろくな動きも見せないEA-6Bの懐に入り込むと、躊躇なくその機体を叩き落した。
≪ガルム1、FOX2。―――撃墜≫
イーグルアイのその声に、気のせいかほっと息を吐くような無線が混じったような気がする。
≪これであとの味方も通りやすくなったな。よくやった、ガルム1≫
イーグルアイの言葉と同時くらいだろうか。
俺たちは、二機揃って作戦空域を離脱した。




大半の仲間たちはまだ作戦空域を飛行していた。
戻って助けてやれることは何もない。

戦場に飛び立っていく男たち。
敵地に向かって降下していく男たち。
飛び来るミサイルに、向けられる敵の舳先。
全ての男たちに捧げられる言葉は、ただ一つしかなかった。

"GOOD LUCK"







あれは酷い状況だった。
仲間も大分やられた。

―――でも、俺たちは生き延びた。



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