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あおはとのゲーム雑記。元々AceCombatブログでしたが今はいろいろ・・・
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≪沈黙の片羽≫
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REVEAL ONE
エースコンバットの世界で
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REVEAL ONE
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ヴァレー空軍基地の夜は長く、朝は早い。



標高3000Mの山々に囲まれた朝は、吐く息が凍るほどに寒く、空は明るけれど陽はなかなか射さない。
昨晩のうちに降り積もった滑走路の雪を、朝一番の除雪車が地道に一本ずつどかしてゆく。
そんな除雪の終わったアスファルトの端っこに、厚手のフードジャケットを着込み、足元はしっかりと滑り止めのついたアーミーブーツを履きこんだサイファーが、白い息を吐きながらひょっこりと姿を現した。
「ようサイファー、今日も早いな」
俺―――ウスティオ空軍第107整備中隊整備員、オルトン・フィッシャーは除雪作業をしながら気軽な気持ちで挨拶を投げかける。
対してサイファーも手の平を持ち上げてみせ、軽く挨拶を返す。

ガルム隊1番機のパイロットであるブルーリー・スカイマン―――サイファーは、昨晩の作戦や飲みがどんなに遅かろうと、毎朝決まった時間にジョギングのために滑走路脇に姿を現していた。
俺は滑走路の除雪作業係でもあり、中隊の仕事内容の大半が除雪作業でもあるため、朝は決まった時間に仕事を開始している。
最初こそ仕事もせずにジョギングなぞどこの腑抜けた整備員だ?なんて思ったもんだが、出撃の混乱の中でパイロットスーツを着込み、ヘルメットを持っているサイファーを目撃してしまって以来、俺にとって奴は今ではすっかり定着した顔なじみとなっている。

サイファーはジョギングの前に簡単なストレッチをいつも通り行うと、整備員の邪魔にならない格納庫脇のスペースで簡単な走りこみを始めた。
そこよりも少し離れた格納庫から、先ほどから起動していた一機の戦闘機が、真っ先に除雪が終わった滑走路へと進み始める。
こんな朝からフライトかね?
変わったやつもいるもんだ、と除雪機に乗ったままぼんやりと滑走路を見やって見れば、その機体は両翼が紺色にペイントされたF-15、垂直尾翼には―――あらまあ、よく見る鎖を噛んだ犬のマークが描かれているじゃあないか。
「あれ、サイファー、アレお前の・・・」
サイファーは皆まで言われずとも何のことかわかったらしい。
初めて見るようなギョッとした表情で機体を振り返ると、全速力で機体に駆け寄っていった。
滑走路に対して真っ直ぐに舳先を向け終わったコックピットには、たしかに誰かが乗っていた。そして必死の形相で駆け寄ってくるサイファーに親指を立てて挨拶を投げかけると、その誰かはちゃっかりアフターバーナーに点火した。
サイファー、走る、走る。・・・が、所詮戦闘機の加速に人間の脚力が追いつくはずもなく、熱風と化した機体は、爆音を残して大空へと飛び立っていった。
出来上がった轍の真ん中で、肩を弾ませた本来の主が、ひょっとしたら視線で撃とせるんじゃないかと思うぐらいの殺気のこもった視線で、中指をおったてていた。



本来いるはずの機体が出掛けて空になった格納庫の前で、サイファーは大空の隅でゴマ粒みたいな大きさになった愛機の姿を、珍しくイライラした様子で睨みつけていた。
火をつけないままの安物の煙草をギリギリと噛み絞め、トントンとつま先を刻む。
「ようサイファー、らしくねえじゃないか。」
彼がイライラするところなど、この基地に来て以来見かけたこともない。
「ハニーに乗ってんのは誰なんだい?PIXYか?」
俺には遠く過ぎて飛行機が空の染みにしか見えないんだが、サイファーには見えるらしい。
一層激しく煙草を噛み締めながら、ぶんぶんと首を横に振る。飛行機乗りの飛び方で何が違うのか俺にはわからんが、違うらしい。

「よう青ッケツ、元気そうじゃねえか!」

そんなサイファーに、唐突にとんでもない言葉をが投げかけられる。
俺はぎょっとして声と反対側にとびすざった。
・・・ちぎれた煙草がポトリと足元に落ちた。
落とし主―――サイファーが非常にゆっくりと、尖った視線を声の主にむける。
向けた視線の先―――格納庫の中からは、ジャングルよりも深い黒々とした鬚を顔一面に携えた、ずんぐりむっくりという表現がぴったりのおっさんが、のしのしとO股でこちらに向かってきているところだった。
そしてサイファーの横までやってくると、その仏頂面の下の肩といい背中といいあたり構わずバンバンと叩きまくりながら、もじゃもじゃの髭を動かす。
「クレイジーホークは元気か!お前がまた戦場に戻るとは思わなかったぜボーイ、今日も相棒と大空でよろしくやってんのか?今回はそんなお前にとっておきのプレゼン・・・」そこで後ろを振り返って今更気づいたようにつぶやく。「ありゃ、いねえのか」
どうやら、このおっさんはサイファーの知り合いで、サイファーに用があってわざわざここまで来たらしい。
「相変わらず無口だなお前、喉は治したのか?ん?」
サイファーは残りの煙草を噛み砕かんばかりに歯ぎしりしながら、左右に首を振った。
「いい医者紹介してやるよ、紹介料と手術料は高くつくがな!!」
がはは、と笑うオヤジの横で、サイファーが額を抑えながらうつむく。気のせいか、こめかみの血管が浮き出ていた。
たしかに、頭が痛くなりそうな光景だ。
「お前が鳥の餌になってなけりゃホークの様子を見せてやろうと思ってな、マットを連れてきたんだが・・・・早速やりやがったな」
ガルム1の機体に乗り込んでいるのは、マットという人物らしい。
その頃になってようやく他の整備員も異常に気づいたらしい。各々の獲物―――雪かき道具や箒、雑巾、整備箱―――を手に、ぞろぞろと集まってくる。
「え?ジャック?サイファーのアレが?」
「でも管制塔からはなんの連絡もないぜ?」
「聞いてみようか」
なんだかんだと、朝っぱらだというのにサイファーの格納庫の前には人だかりができていた。
そうしている間にも、空の染みのようだった飛行機は、気がすんだのかこちらに向かって戻りつつあった。その大きさがだんだんと視認できるほどになる。
皆の注目する中、誰が連絡を取ったのか、報告の声が上げる。
「管制塔に聞いてみたが、ちゃんとサイファーが離陸許可とって出てったらしいぜ。今戻るって無線もあったってさ」

・・・・・・どうみても、ニセモノだ。

サイファーを知る誰もがが恐る恐る本人を振り返るが、その顔はもはや能面のように無表情だった。
そうしている間にもガルム隊のエンブレムを付けた(中身が)正体不明機は、着陸態勢に入る。
別にベルカの攻撃機だとかスパイが乗ってるとか、自爆装置が付いてるとかそういうわけじゃないはずなのだが、誰もが息をのんでその着陸を見守っていた。
いつも見慣れたガルム隊のエンブレムを背負った、両翼が紺色にペイントされた機体が減速し、高度を下げる。
「あれ」
誰かが呟いた。
「車輪が出てない」

「・・・・」

朝の冷たい空気が、一団の中をサーッと吹き抜けていった。
「胴体着陸でもするつもりか!?」
「おい、車輪!車輪出せ!」
やんややんやと騒ぎ立てる整備員の様子に気付いたのか、管制塔に指示されたのか、自分で気付いたのか、サイファー機は滑走路の目と鼻の先で慌てて車輪を出しにかかった。
「・・・・」
知り合いと思しき先ほどのオッサンも、もちろんサイファーも、顔色ひとつ変えないままその様子を眺めていた。
・・・もう少しよく見ると、息をしてないのがわかるが。
着陸寸前だというのに、よたよたと羽を振るイーグルが、角度だけはいっちょ前に滑走路に到達する。
「ああ、機首あげるの早いんじゃあ・・・」
誰かが呟いた。
皆が息を呑んで見守る中、イーグルはついに滑走路にタイヤを―――つけた。
と思いきや、また空中に浮く。また滑走路につく。また空中に―――・・・
「・・・バウンドしてやがる」
誰かがぼそりと呟く。
滑走路に付いたり浮いたりしたまま、俺たちの集う格納庫の前を、少なくとも時速300㌔以上のスピードで横切っていく。
通り過ぎるイーグルを追って、突っ立っていた人間が残らず首を真横に振った。
大勢の人間に見守られる中、イーグルは滑走路の終着点にあるハンガーに車輪を引っ掛けそうになりながら、再び空中へと戻っていく。
「・・・・何しに戻ってきたんだ?」
―――誰も、答えられなかった。

なんとか旋回し、ようやく危なっかしいながらも滑走路にタイヤをつけることに成功したサイファー機が、やっと減速する。そしてちょうど俺たちの佇むハンガーの前辺りにやってくると、キャノピーを全開にし、こちらに向かって手を振った。
反射的に皆がサイファーを振り返る。
サイファーは、手を振る人物に真っ直ぐに視線を合わせたまま、足を踏み出した。
そしてまさに今イーグルのコックピットから飛び降りてきたばかりの、ヘルメットを脱いで、フレンドリーな笑顔で片手をあげたその人物に、大股で歩み寄る。
「Yo, Boy! long time no see...」
最後の方は小走りだった。
満面の笑顔に、体重と慣性を乗せきった怒りの右ストレートが、ついに炸裂した。


マット・ケーフ。ヒゲもじゃの親父―――バリー・ラッシュに連れられてきた、F-15Cサイファー専用機の整備人。
少し縮れた黒髪に、彫りの深い顔立ち。年のころは30~35くらい。頬や体つきはほっそりしていて、背はサイファーよりも頭ひとつ分低い。少し落ち窪んだ眼窩の中で妙に白く輝く眼球といい、いかにもな”オタク”の外見をしていた。
こちらの言葉が喋れないのか、掴みかかるサイファーに、聞きなれない言葉で今も必死に弁解?をしている。舌はよく回るらしい。

傭兵の飛行機乗りには二通りのヤツがいる。自前の機体を持ってやってくるやつと、経歴で乗り込んでくるヤツ。
経歴で乗り込んでくるヤツは、軍の戦闘機を借用という形で借りて乗ったり(もちろん、借り賃は払う)、バリー・ラッシュのような民間軍事会社から購入したり、あとから機体を調達する。
ガルム隊であるサイファーやピクシーは、偶然両方ともが機体持ちだった。
自前の機体の整備人がいたとしても、サイファーほどの稼ぎがあれば不思議じゃないだろう。
バリー・ラッシュの話によれば、今回マットと呼ばれるこの青年は、会社の用事にかこつけて、久しぶりにサイファーの機体の調子を見に来たらしい。

そんなこんなな話を寄り集まってしていると、そこかしこの無線が一斉に怒鳴り声をがなりたてる。
≪こらー!いつまでも滑走路を塞いでるんじゃない!連合軍の輸送機がもうすぐ到着する、仕事をしろ、仕事をーッ!≫
俺たちは蜘蛛の子を散らしたように一斉に持ち場へと散っていった。
「またな、サイファー!」
親指を立てて走り去る俺たちに、サイファーはいつもの笑顔で親指を立て返して、その姿を見送ってくれた。


「ったく、どいつもこいつも懲りない連中だ、クレイジー*****だぜ。ボーイ、お前もな!」
バリーがこめかみに指を押し付けて大きくため息をつく。とてもさっきまでサイファーに同じしぐさをさせていたものの言うこととは思えないが、―――彼に限ってはよくあることだ。
あてつけられた当のサイファーは、軽く肩をすくめてやり過ごす。
「おいボーイ、いやここではサイファーか。あとでお前に渡すもんがある。うち一つはマットから受け取ってくれ。あとひとつは商談が終わったら個別に俺んトコに来な、今日の夕方まではいるからよ。」
オレがボーイ・・・サイファーの顔をみやると、サイファーも不思議そうな顔をしてオレ―――マットの顔を見返す。
「そんな顔すんなって。お前が喜びそうなもんを持って来たってんだからョ」
「そういうことだ。―――いいか、絶対来るんだぞ!お前らにかまけてばかりいてうかうかしてると商売敵の船が来ちまうじゃねえか、こちとらはるばる徹夜してきたってのによ!じゃあな!―――いいか、忘れるなよ!」
ご丁寧に二度も繰り返して、O脚の親父はどたばたとハンガーを出て行った。
辺りにほとんど人がいなくなったのを確認して、俺は持ってきた例のブツを取り出しにかかる。実は機体に乗り込む前に、予めハンガーに持ち込んどいたんだ。
「よォお前さん、こいつァオレの最新作だぜ、役に立つこと間違いなしだ!」
そういって、バラバラと部品を取り出しにかかる。一番解りやすく見せるにはこれだろう。オレは黒い小箱を取り出し、サイファーに見せた。
「こいつァオレ様お手製のアレさ。―――いわゆる、クレイジーホークの脳みそさ。おっと作り方は秘密だぜ。―――ああ、勘違いスンなョ、中身はさすがにヤツほど腐っちゃいねェから安心しな」
オレはサイファーの古い友人―――そしてオレにとっても友人だった男の名前を持ち出す。
オレやバリー、ボーイことサイファーが”クレイジーホーク”と呼ぶものは、二つある。
一つはクレイジーホークという通り名の人間―――オレたちの古い友人本人、ひとつはクレイジーホークの忘れ形見―――目の前の両翼が紺色にペイントされたF-15Cだ。
同じクレイジーホークという名前を持っていても、その脳みその腐り具合は可愛いイーグルと糞野郎では雲泥の差がある。イーグルが飛行機雲なら、ホークは汚物処理場の汚泥だ。
オレは機体の周りを見て回りながら簡単にチェックを済ます。
「それとさっき乗ってみた感想なんだが、随分エンジンに無茶させてんじゃねェか?またどうせケツに火をつけッ放しなんだろう?ガタガタ言ってやがる」
とはいえ、それ以外は相当丁寧に乗り込まれていた。
戦時中の軍程度のメンテで1ヶ月も同じ機体で出撃を繰り返せるんだから、相当丁寧に乗ってる部類だ。
「―――まぁそいつは仕方ねェ。・・・*****ホークだからな」
オレは偲ぶようにスピード狂、クレイジーホークことホークの名を口にする。
空と戦闘機が好きな変態オタク。飛ぶために産まれてきたといっても過言じゃないくらい、ヤツは戦闘機を愛していた。俺にはなんで羽を生やして産まれてこなかったのかの方が不思議なくらいだ。
「だがちょいと年季ものすぎだな。ここらでちょいとオレ様が”若返らせ”てやるよ」
サイファーもヤツのことを思い出していたんだろうか、ほんの少し口端を引き上げると、軽く頷いた。
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