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あおはとのゲーム雑記。元々AceCombatブログでしたが今はいろいろ・・・
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≪沈黙の片羽≫
エースコンバットZEROの読み物。
ベルカ戦争を駆け抜けた鬼神の姿を、登場人物の視点から振り返る

REVEAL ONE
エースコンバットの世界で
2005年時点の読み物。
ブレット・トンプソンがヒロインの物語。

REVEAL ONE
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ジャンルは特に指定なし。
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ふと目が覚めたそこは――正方形の白いパネルが並ぶ空を持つ、天国だった。

真上から覗き込んできた、ゆるくウェーブのかかった金髪の女性に向かって私は独り言ちる。
「ここは天国ですか」
するとその女性はおかしそうにクスっと笑うと、やんわりと「違いますよ」、と対応してくれた。
「先生、意識が戻られたようです」
どうやら、ここは現実らしい。
やってきた白衣の医師に目線を遣って、私はなんとか上体を起こす。
少し頭がくらくらして、肩といわず腰といわず首――特に回せないくらい重症だった――といわず、体中が痛かったが、どうやら五体満足らしかった。
「私はどうなりました・・?」
すると医師はニコリとも笑わぬまま、私の脈を取り、聴診器を当て、なにやらメモをとる。
「どうもしないね。至って健康体だよ」


起き上がってみて気がついたことだが、私はパイロット・スーツを脱がされており、上は中着一枚だった。
襟ぐりからはみ出した肩には痛々しいほど内出血のあとがあり、腕や見える白い部分は赤い斑点が出来ていた。
私はせめて肌を隠すものを着ようと思い、荷物がどこにあるか教えてもらった。そしてまだふらつく足でそこへと向かう。

そういえば、馬車引きはどうしたんだろうか――?

蛍光灯が照らす無機質な廊下を通ってドアを一枚くぐると、そこは待合室のような、ソファや椅子がたくさん並んだ場所だった。
ただ、待合室と違って受付のようなものはない。
ソファや椅子も、向かい合うように配置され、どうやら団欒室のような空間らしかった。
キャリーバックは、たしかにそのソファの上に置いてあった。
今までのデータのコピー、カメラ、メモ帳、着替え、などなど大事なものが一杯に詰まった鞄である。
私はその中身の無事を確認して、ほっと息を吐いた。
そうしてようやくその部屋の外、ガラスがはめ込んである引き戸の向こうで、見覚えのある後姿がこちらに背を向けてぼんやりと突っ立っているのに気付く。
パイロットスーツからは着替えていたが、上下共にミリタリージャケット・パンツなので、あまり代わり映えがしない。
そしてよく見ると、紫煙を立ち上らせている。喫煙タイムらしい。
その彼のところに一人の男が小走りにやってきて、二言三言、なにやら言葉を交わす。
そしてぼんやりと眺める私に気付いたのか、こちらに目線を遣って、手の平で指す。
彼が振り向いた。
予想通り、シガーをお楽しみ中の、馬車引きだった。
彼はシガーの火を揉んで消すと、ケースにしまいがてら中に入ってきた。
教えてくれた男性は彼に向かって軽く手を振ると、どこかへと去っていった。
そして、入ってくるなり第一声、彼がニヤリと笑って言い放つ。
「よう肝っ玉、生きてるか?」
私は苦笑いしか返せなかった。
そして、誰にも教えてもらえなかった問いを繰り返す。
「ここはどこです?・・・」
「ユージア大陸」
返答は短かった。
ついに、・・・実感はないが、ついにこの大陸へと足を踏み入れたのだ。
私は生まれて初めて大陸を出て、別の大陸の大地を踏んだことになる。
「私たちは・・・生き延びたんですね」
彼は特に返答を返さなかった。彼にとっては、当たり前で取るに足らないことだったのかもしれない。
そして天気のよい外をみやって、眩しそうに目を細めた。
「9時に迎えが来ることになってる。寝過ごさなくてよかったな」
「え?」
私は驚いて聞き返す。
「君がついてきてくれるんじゃ・・?」
すると彼は口をへの字に曲げ、肩をすくめてみせる。
「馬の他は専門外なんだ」
短い間だったが、少し彼に信頼を覚えていた私は、目に見えてガッカリした。
「そんな顔するな。帰りも待つことになってるんだ。また乗せてやるよ」
そして何がおかしいのか、俯いて喉の奥で笑うと、踵を返す。
「じゃあな、頑張れよ。――”片羽”とやらによろしくな」
私はその後姿をただ見送るしかなかった。




[2005年11月22日 午前8時48分]

ブラインドの隙間から差し込む朝日がまだ眩しい時間。
高そうな木製のデスクの上に鎮座した電話が、電子音を奏でる。
その受話器を、片肘をついて座る男が手に取る。
「俺だ」
年のころは壮年の終わりから中年にかけてだろうか。ややたるんだ色白な肌が朝日に照りかえる。頭部は皮膚よりも残っている頭髪の方が少なかった。
「ああ・・・繋げ」
しばしの間を挟み、電話が別の音声を流しだす。
『グラオです。』
その声は、標準的な人間の声と、僅かに異なっていた。機械で声を変えているのかもしれない。
声は続けて早口に言う。
『しくじりました。例のはユージアに渡ったようです』
電話を受けた男の血相が一瞬にして変化した。
「なに?たかが一人に何をてこずっている!」
『民間の傭兵に、いいように撒かれたようです。――ですがご安心を、まだチャンスはあります。』
「なんだと?」
『向こうは終戦したとはいえ、まだ混乱しています。その混乱に巻き込まれない・・・とも限りますまい』
男はいらいらとデスクを指先で叩く。
「・・・・むこうでやるのか」
『こちらでことを起こすよりは簡単でしょう。ついでにあの男も片付けてしまえば一石二鳥かと。』
そしてしばし考えた後に、やや躊躇うようにその言葉を口にする。
「・・・ヤツは”アレ”の居場所を知っているのか?」
電話の向こうの相手も、やや沈黙したようだった。
『・・・接触を図らないところを見ると、おそらく、我々と同様。・・・知らないのかと』
「例のは本当に、まだ”アレ”には接触できてなんだろうな?」
『収録データを調べました。していません。』
「万一そいつが”アレ”に接触したとすれば――あの資料が外部に漏れるかもしれんのだぞ!――接触する前に、なんとしてでも消せ」
『お任せください』
そういって、相手は電話を切った。
男は、無機質な電子音を奏でる受話器をしばらく耳にあてていたが、やがて低く唸りながら受話器を置いた。
「・・・それにしてもヤツは、何故無意味に10年も機密を持ち続ける?・・・」
男はここ10年間、幾度となく頭を巡らせた疑問を再び口にする。だが今日もまた、その答えは見つけれそうになかった。
その窓の外で白い鳩が数羽、羽音をたてて飛び立ってゆく。




[2005年11月22日 午前9時00分]

時計が直角を刻む時刻ぴったりに迎えに来た人間は、茶がかったブロンドで、背の高い青年だった。
年のころは30半ばほど。がっちりとした体格で、ミリタリーコスチュームがその雰囲気と妙に合っている。
男は顎一面にやや伸びかけた無精髭をぐるりとさすると、その青灰色の瞳で私の顔を見て尋ねた。
「トンプソン・・・かな?」
私は軽く頷くと、同様にして聞き返す。
「あなたは?」
「例の彼の友人さ」
その男は感じのいい笑顔で、にっと笑った。どうやら、やたらに変な人物ではなさそうだ。
私は改めて彼に頼む。
「彼の居る所まで連れて行って欲しいのだが・・」
「ああ、その為に来たんだ。」
彼は私の荷物を無造作に持ち上げると、さっさと外へ向かって歩き出す。
本当なら人に持たせたくはないのだが・・・・ジェントルなのか強引なのか、掴みかねる人間だ。
そんな彼とすれ違うようにして、この基地の事務員なのだろう、軍服を着た男性が一枚の書類を持って私の元へやってくる。
彼が言うには「この空軍基地から出るには、同意書へのサインが必要」らしい。
私は彼の持ち寄った書類に目をやる。そこには、たった数行の文章が書いてあるだけだった。
文章よりもむしろ、中央に据えられている大きな枠のほうが、激しい自己主張をしている。
曰く――

”私は当国に入国するに当たって、負傷・死傷を負う如何なる状況においても、自らの責任において行動することを誓います”

たった数行の文字に、私は言いようもない衝撃を覚えた。


そう、――ここはまだ、戦場なのだ。


私は、戸惑いながらもサインを済ますと、迎えに来てくれた男性のあとに従う。
彼は、歩きながら簡単に自己紹介をしてくれた。
彼の名前はシモン。”片羽の妖精”、ラリー・フォルク――今は違う名前を名乗っているらしい――は、彼の戦友だそうだ。
自己紹介を済ますと、彼は私に多くを尋ねず、空軍基地の外――フェンスの横に停めてあったジープに案内してくれた。
そこにはもう一人、クセのある黒髪で、鼻の下にちょび髭を生やした顎の尖った男が荷台で待ち構えていた。その男の後ろからは、車というものには違和感のある鉄の塊がにょっきりと首をもたげている。
――機関銃だった。
垂れ目気味なその男は、強張った私の顔を見つけると、フレンドリーににっこりと笑ってみせた。

彼はアルチデという名だそうだ。
もちろん、私にはそれが本名かどうかは分からない。だが、私のとっても、恐らく彼らにとっても、それはどうでもいいことなのだろう。
私はたどたどしいながらも、現地の言葉で挨拶を返す。
彼らはそれを聞いて、無理をしなくてもいいと笑った。
「そこにいる彼は、向こうの言葉――そちらの言葉に疎いが、俺はこの通り話せるから、不自由はしない」
そう言ってシモンが私に微笑みかけ、彼らと同じヘルメットを私に手渡す。
そして、車高の高いジープに手馴れた身の軽さで乗り込むと、エンジンをかけた。
「彼の居る場所までは、このジープで行く。数日はかかるから、覚悟しといたほうがいい」
そういって、シモンはアクセルを踏み込む。途端、私の頭がまるで振り子のように大きく左右に揺れる。
彼らに言わせれば、たぶん――非常にジェントルな運転の、筈だ。




”片羽の妖精”のいる場所までは、おおよそ3日はかかるとシモンは言った。
それに、国境をいくつか越える上、まだそこは不安定な地区だということもあって、行く先々で同意書が必要になるそうだ。
正直、政治的に安定していたオーシアの都市部で暮らしていた私にとっては、この手続きはかなりのカルチャーショックだった。
・・・私の命は、サインひとつでなんの保障もなくなるらしい。

適度に休憩を取り、食事を取り、それでも一日中走り続ける中で、彼は色々なことを話してくれ、私もいくつかのことを彼に話した。
ユージアへはどうやってきたのか?民間航空機はついこの間の占拠騒ぎで全面ストップしていたはずだが?――戦闘機で?そりゃ傑作だ!それで貴方は何をしにこちらへ?取材?命がけだね。貴方を狙うヤツがいることは、大きく気をつけなければならないことだね。それに、ここらはまだ落ち着いてない。戦争なんかしても、国民や難民にとっては、なんの解決にもならないんだ。人は、まだ混乱している。国境は、今も揺らいでいるよ。――
シモンは感じのよい人柄をしており、長い道中、私はそのことに大きく助けられていた。

一日目、二日目、私たちは順調に”片羽の妖精”の居場所に向かって走り続けていた。
言葉の分からないアルチデは始終黙っていたが、シモンとの会話では時々笑顔を見せていた。
私は、孤独と共に、心細さを感じる。
信念は揺らがない。だが、言いようのない不安は感じる。
・・・孤独という、不安だ。
”片羽の妖精”は、そんな場所に、居る。

三日目の道中。
そろそろ目的地が近い、とシモンが呟いた頃だった。
ということは、つまり、情勢が不安な地域に差し掛かってきているということだろう。
私はお決まりのように、もう何度書かされたかも忘れた内容の紙切れに、自分の名前をばら撒いてやった。
覚悟とは、こうやって固まっていくものなのかもしれない。
――その覚悟が試される時は、唐突にやって来た。




[2005年11月25日 午前10時04分]

それは人気の乏しい民家の傍で午前中の休憩をとっているときだった。
アルチデは水を汲みに行き、シモンは運転席の横で大量生産の安物の煙草を吸い、私は、水筒に残っていた水をジープの助手席で飲んでいた。
人もまばらな静かな村で、ぽかぽかと日差しも暖かく、平和な風景が目の前には広がっている。
情勢が不安とはいえ、こんな辺境の村ではそんなことは無縁の出来事なのかもしれない。
そんな風景の中から、手に鍬を持った住民が民家の裏手から出てくる。農作業の途中なのだろう。
私は何の気なしにそれを眺めており――次の瞬間、体が動くよりも先に声が出ていた。
その男は、袖の中に手の平にすっぽり納まる筒――銃を持っていたのだ。
そして、その銃口が運転席横で煙草を吸うシモンへとすばやく向けられる。
「あッ」
声と、伝わる音と、男の視線と、私の手と、引き金を引く指と、身を伏せるシモンと、一体どれが早かっただろう。

パン!

乾いた発砲音があたりに響く。一瞬遅れて、シモンの苦悶の声が上がる。
私は反射的にジープの床にまで頭を突っ込んだ。ドアのないジープでは、そうでもしなければ容易く頭をスイカにされそうだったからだ。
続いて、二発、三発と発砲音は鳴り続ける。
負傷をしながらもとっさにジープに乗り込んだシモンが、崩れこむような体勢のまま、アクセルを踏み込んだ。
そのまま民家に突っ込みそうになったジープのハンドルを、私は慌てて横から握る。
「頭を低くしてろ!」
パン、パンと更に何度か破裂音が響き――同時に走り出したジープの真正面に、またもや銃をもった人間が飛び出してくる。
シモンが急ブレーキと共にハンドルを切った。泥除けだと思っていたフロントに、丸い形のヒビがビシリと入る。目の前で何かがぽろりと零れて床に転がっていったが、車に振り回されてそれどころではない。
「落ちた、何か落ちた!」
「ほっとけ!舌を噛むぞ!」
続いて出てきた人間たちが、後ろのほうで何か分からない言葉で言い合っているが、それもやがて聞こえなくなる。
シモンは道なき道を飛ばしに飛ばし、川を渡り、茂みをなぎ倒し、道とは思えない壁を登り――とにかく、逃げに逃げた。
私はトランポリンのように上下する視界でなんとか後ろをみやるが、アルチデの姿は荷台にはなかった。
シモンは走りながら器用に腕と脚を縛り、けして車を停めることはなかった。
暫くそうして走り続け、やがて、川なのか沼なのか、ある程度の広さのある水辺の横でやっと車を停める。
「現地人でも雇ったのか、くそ、いてぇ」
そう言いながらシモンはポケットからばらばらと色々なものを取り出し、血で濡れそぼり、張り付きだした右袖を破りとる。見やれば、ズボンの左袖も血塗れて足の形に張り付いていた。
「シモン、どれくらい怪我をしたんだ、手当てをする」
「クソ、痛い、弾を取り出すから適当に縛っててくれ、クソ、いてぇ」
シモンは始終クソ、といてぇを繰り返しながら、見ている私が倒れそうなスプラッタ惨劇を繰り広げ、脚から弾を取り出した。腕は貫通したらしく、弾は残っていないそうだ。
「俺一人か・・・もう少し行けば仲間の拠点がある、そこまでなんとか持たす」
かなりの血の気を失ったシモンが、失血のせいだけではないのだろう、蒼白な顔をむけて私に言う。
私は、その冷静さに呑まれながら、なんとか頷き返す。


彼らは、何故こんなにも必死になれるのだ?
私は、彼らの命を賭してまで、なにを片羽に求めるんだ?
そしてそれは、・・・はたして天秤にかけれるものなのか・・・?


――私の信念は、揺らぎ始めていた。


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