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あおはとのゲーム雑記。元々AceCombatブログでしたが今はいろいろ・・・
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≪沈黙の片羽≫
エースコンバットZEROの読み物。
ベルカ戦争を駆け抜けた鬼神の姿を、登場人物の視点から振り返る

REVEAL ONE
エースコンバットの世界で
2005年時点の読み物。
ブレット・トンプソンがヒロインの物語。

REVEAL ONE
エースコンバットの短編ら
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目の前の”片羽”は、俯いて肩を震わしていた。
泣いている?
――いや、笑っている。

彼は自動小銃に寄りかかり、最高のジョークを聞いたかのように笑い狂っていた。
「おいシモン、聞いたか。――コイツは本物の”肝っ玉”だぞ!」
話を振られたシモンも、きょとんとした顔で私の顔を見返す。
実際に”鬼神”に会った事のない私たちには、理解できないジョークだったのかもしれない。
それとも、彼の中の何かに触れてしまったのか。
いずれにしても、それは私たちに理解できることではなさそうだ。
”片羽”は笑いの収まらない腹筋を震わせながら、目尻を軽く拭う。
「ああ、すまない。つい可笑しくてな・・・」
私は少し憮然として問い返す。
「何か気に障ることでも?・・・」
「いいや」
彼は改めて心なしか少し柔らかくなった表情で、私の顔をみやる。
「あいつには、俺たちが背負うような信念、正規兵が背負って飛ぶ国家、飛び方の伝統、戦い方におけるプライド、・・・何もなかった。敵、目標、思想、プライド、国家、信念、伝統――そう、触れるもの全てを破壊していく、まさに”鬼神”だったんだ。」
彼は軽く銃を弄びながら続ける。
「そして、そのことにも拘らなかった。だからなんだろうな――あいつが触れていったものは、全て壊れていった。いいものも、悪いものも。」
彼はほろ苦い笑いを頬に浮かべ、言葉を選ぶように付け足した。
「・・・アンタが変わったのも、きっと奴の見えない呪いが、何かを壊していったからなんだろう」
私は、彼が言わんとしていることを理解しかけていた。


今までの私は、こんなに精力的に取材に取り組んだことはなかった。
私が取材したような人物たちも、おそらくは彼に会うまでは、私と同じように生きていた。
それは、良い意味で保守的で、悪い意味で大人だった。
だが、”鬼神”は、そんな私たちの持つものを、あらゆる意味で、全て壊していった。
彼らや”片羽”にとっては、”鬼神”は悪いものを壊してくれた”鬼”だったのだろう。
――そして、それは私にとっても同じだった。
つまり、”片羽”からしてみれば、壊されたこと自体が可笑しく、そして――嬉しいことだったのだろう。


そんなピクシーに向かって、シモンが驚いたように身を乗り出して言う。
「お前・・・元は戦闘機乗りだったのか。」
「昔の話さ」
「聞く限りじゃ腕もよさそうだし・・・ISAFに志願して乗ればよかったじゃないか」
すると”片羽”は苦笑とも苦渋とも似つかない表情を浮かべ、首を軽く横に振った。
「もう空には上がらないと誓ったんだ。」
「・・・何故?」
”片羽”は彼のその問いに軽く沈黙を挟み、答える。
「・・・空は、高すぎるんだ。乗る者に大地を忘れさせてしまう。」
恐らく、彼は自分の過去を繰り返すまいとして、空に上がることを封印した。それは、苦い反省から出た彼なりのの答だったのだろう。
――それはそれで、ひとつの答えなのかもしれない。

私はそろそろ、核心を切り出すことにした。
今回の旅の目的――そして、私を突き動かした最もコアな部分を担う謎。
「”国境無き世界”――あなたは何故、そこに加担し・・・」
言葉を耳にする”片羽”の視線が鋭くなる。
そう、これこそが、私の”鬼神”像の最大の謎だった。
「何故――鬼神はそれを止めたのです?」





彼は、質問を受けてから暫く手先で小銃を弄っていた。その瞳は空ろで、床の一点を意味もなく見つめ続けている。
やがて彼は苦々しく笑うと、やっとその顔を上げた。
「・・・あいつが何を考えていたか――分かる人間が居るなら、是が非でも紹介してほしい」
私とシモンは、黙ってその言葉を受け止める。
「そうだな――・・・」
彼は大きく、大きく息を吐いて、その長い言葉をひとつづつ、かみ締めるように語っていった。
「俺はあの時――この世界をこの手で変えれると、本気で思っていた。」




変えたあとの世界はどうなるかわからない。
だけど、可能性を与えることは出来ると思っていたんだ。

だが――
そんな俺に、あいつ――鬼神が俺に言ったんだ。

”死んでもいいと思ってるだろう”
”本当にお前の望む世界を変えたいと思うなら――生き残れ、相棒”

・・・目から鱗の気分だった。


傭兵にとって最大の裏切りは――共に戦い、背中を預けたものを騙すこと。
戦場の中では、小さな信頼が、全てなんだ。
”あいつなら必ずやる”
その信頼が、全てなんだ。信じてるから、自分の役割を全うできる。

そのときの俺には、V2を守ることが全てだった。それで世界を変えれると信じたんだ。
そして同時に、”あの”メンバーからの信頼も背負っていた。
でも俺自身――本当は、半信半疑だったのかもしれないな。
ただ、哀しくて、己の存在が空しくて――可能性を作り出す礎になりたいと考えた。ただ、それだけだったんだ。俺は死んでもよかった。
俺の望んだ世界に世界が姿を変えるなら――・・・


だが、計画は失敗した。
相棒に撃ち落とされ、輝く空を見ながら――俺は少し安心していたよ。
あいつの守る世界が勝ったんだ、あいつの望む世界が続いていく。

・・・やがて降下した地点から捜索の目を逃れるために、俺は逃げに逃げ――
痛む体でたどり着いた場所は、核の爆心地だった。

――・・・
誰も、いなかった。
何も、なかった。
風の音もない。
虫の声もしない。
葉擦れの音も――
鳥の声も――

何もなかった。

静かだったよ・・・



俺が作り出そうとしていた世界は、これだったんだな。
情けない話だが、降り立って初めて気付いたよ。

そこには争いもない。
国境線も、人がいないのだからあるはずがない。
だが、次に続くものも――何もない。

・・・俺は、何かを間違ったことを悟り始めていた。
大空から世界を見下ろすことで、自分の歩んでいた大地のことを、いつの間にか忘れてしまっていたんだな。
今更、涙が出た。
今度こそ、もうここで死んでもいいと思ったよ。


――だが、倒れて意識を失った俺を、運よく近くの人間が助けてくれた。
こんな場所でも、力強く生きていく人がいたんだ。
俺は、俺のしたことは、こんな風に力強く生きていける人たちを、丸ごと消してしまうことだったんだ。
そのときは、まるで神様か何かのように世界をこの手で変えることが出来ると、信じ、変えたいと願ってしまったんだ。
・・・俺も、彼らと同じ『人間』だったのにな。


介抱されて、生きながらえながら――いつのまにか、俺の中の考えは変わっていた。
死んでもいいと思っていたはずだった。
だが、――不思議なことに――そのときはもう、そんな気分はすっかり抜けて無くなっていたんだ。
相棒の守ったこの世界、相棒が信じたものを、もう少し見守っていたくなっていた。
そして俺自身も――もう少し生きて、答えを探したくなっていた。




そこでピクシーは、一息つくように、ため息を漏らす。
「・・・世界を変えるのは、兵器や、一部の政治じゃないんだろうな。」
そして床を眺めたままだった視線を、やっと私たちのほうへ持ち上げる。
「相棒は、俺を信じた。・・・分かり合えることじゃない、俺の望む世界を信じてくれたんだ。」
その瞳は、私が最初に魅込まれた、その光を放っていた。
「年の功ってヤツかな。・・・あいつは俺の取った方法では、望む世界を得られないことを教えてくれた。だから、止めてくれた。――それでよかったんだ。俺は、後悔するチャンスを失うとこだった。あいつがいてくれて、よかったんだ。」
それが、”鬼神”に壊された”片羽”なのだろう。
彼は、信念を壊し、後悔を与えていった。
だが、それは――

私は目の前のピクシーに、意図せず浮かんだ微笑みを向ける。
”鬼神”が居たから、世界は変わらなかった。
”鬼神”が居たから、”片羽の妖精”――ラリー・フォルクは変わった。
そして目の前の彼は、それを楽しんでいる。
私も、その変化を楽しんでいる。
そう、それが答えだった。

”――それでよかったんだ”

”片羽”の言葉が蘇る。
探していたひとつの答えが、目の前にあった。

・・・私は、腰掛けていたキャリーバックから立ち上がった。
「もしよければ、今の全てでなくてもいいんです。番組用に、見つけた答えのメッセージをもらえませんか?」
ピクシーは片頬を持ち上げ、頷く。
私は、カメラを回した。
”片羽”は覚悟を固めるように床に首を向けてから、顔を上げ、言葉を紡ぎだす。




――俺は死ぬはずだった。
でも死ねなかった。
痛む体を引きずってたどり着いた場所は、あの核の爆心地だったんだ。

・・・何も無い光景

それがなんだか悲しくてしょうがなかった。
でも、そこで強く生きる人々がいた。

――俺は、彼らに助けられたんだ。


・・・世界に境目なんて、必要ないかもしれない。
でも無くすだけで変わるんだろうか?

世界を変えるのは人を信じる力なんだろうな。
信じ合えば憎悪は生まれない。
――でも、それが出来ないのも人だ。

俺はまだ戦場に居る。国境の近くだ。
確かめたいんだ、国境の意味を――。
そして、そこで生きる人々の意志を。

ここに答えなど無いのかもしれない。
・・・でも、探したいんだ。

そう、今はそう思う。
――それでいいと思う。



そこで、彼はカメラを回す私に目をむけ、おどけたように言う。

「この映像はあいつも見るのか?会ったら伝えてくれ」































” よう相棒、――まだ生きてるか? ”
























「・・・ありがとう、戦友。

 またな。」




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