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あおはとのゲーム雑記。元々AceCombatブログでしたが今はいろいろ・・・
作品紹介
≪沈黙の片羽≫
エースコンバットZEROの読み物。
ベルカ戦争を駆け抜けた鬼神の姿を、登場人物の視点から振り返る

REVEAL ONE
エースコンバットの世界で
2005年時点の読み物。
ブレット・トンプソンがヒロインの物語。

REVEAL ONE
エースコンバットの短編ら
ジャンルは特に指定なし。
1Pで収まる文字ものたちです。

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”片羽の妖精”は、左手に自動小銃を握り締め、その黒い瞳を真っ直ぐに私の顔にむけたまま佇んでいた。

そこには迷いも、当惑もなかった。
だが、瞳を覗きこまれているうちに、私はふと気付く。
彼は今、答えを探しているのではない。

――私を、探っているのだ。

自分の胸のうちを話すに値する人物かどうか。信用に足る人物かどうか。
私は、その瞳から視線をそらさず、真っ直ぐに見つめ返したまま続ける。
「私は、あなたに会ったら何を聞くか――どんなことを聞こうか、ずっと考えていた。」
彼は黙って私の言葉に聞き入っていた。
「だけど――私をここに連れてきてくれた傭兵、シモンやアルチデと共に居るうちに、正直、自分の信じていたものが分からなくなってきた。彼らは、たかがオーシアの茶の間のテレビ番組のために、命がけで私をここまで連れてきてくれた。私には、そんな大層な信念はない。・・・――オーシアでは、テレビを見るのに、命をかける必要はないんだ。」
私は、彼と私の間に存在するフィルター――眼鏡を外し、真っ直ぐにその瞳を見つめ直し、問う。
「――何故?」

”片羽”は、私の瞳を真っ直ぐに覗き込んだまま、暫く無言だった。
私はその瞳をじっと見つめ返す。

そのときだった。
カチャリ、という金属が触れ合う音が部屋に響く。
とっさに振り返った私と、”片羽”の視線の先にあったのは、――M1マシンガンを入り口で構える、アルチデの姿だった。
生きていたのか、という思いと、まさか?という思いが私の頭をよぎる。
ヘルメットの下で白い瞳がぬらりと輝き、その指がトリガーにかかる。
その鉄の筒の先には、間違いなく私と”片羽”が、佇んでいた。

パパパッ

紙袋が破裂するような音をたてて、銃声が響き渡る。
私は手遅れだと分かっていながらも、身を床に投げ出す。
視界の片隅で”片羽”が半身で銃を構えるのが見えた。
伏せた私の耳に、何か重たいものが倒れる音が響く。
私は、幸い――何故か、痛みを感じてはいなかった。
”片羽”は、入り口を警戒して自動小銃を構えながら、じりじりと壁際に移動する。
階段から誰かが登って来る、規則正しいきしみ音が聞こえてくる。
やがて、やってきたその人物は、部屋に入る前にこちらに声をかけた。
「ピクシー、撃たないでくれ」
現れたその人物は、シモンだった。
彼は左手に自動小銃を持ち、部屋に入ってくると、入り口に倒れるアルチデの体を銃身で起こす。真紅の鮮血が、床にひたひたと流れた。
――彼は、既に死んでいた。
「・・・助かった」
”片羽”が、ほっと息を吐いて銃をおろす。
「これで貸し3つだな」
シモンがニヤリと笑い、ポケットから何かを取り出し、私とピクシーに放ってよこす。
ピクシーは渋い顔でそれを受け取ると、包みを開く。昼飯のパンだった。
「村で襲われたとき、何か引っかかったんだ。彼らは、まるで俺たちの行く道を知っていたかのようじゃないか?・・・そこへ、車もないはずのアルチデが戻ってきた。・・・――ちょっと、な」
「裏切り、か」
そう呟いて、彼らは昼食のパンを齧る。
私は、とてもじゃないがそんな気分になれなかった。
そんな私を見て、シモンがからかうように言う。
「トンプソン、そんなことじゃこの世界で生きてけないぞ。戦場じゃどんな状況でも受け付ける胃袋ってのは最大の武器だ」
「シャバの人間に無茶言うな」
ピクシーが苦笑しながらパンを齧る。
「取材はもう終わったのか?」
「いいや。わざわざこんな辺境にまでやってくるような肝っ玉が、そんな簡単に離してくれると思うか?」
「――違いない」
二人は、何が可笑しいのか声を出して笑い合う。
「それじゃ、俺はコイツと下の――あんたを案内してくれた奴だが、アルチデにやられちまったらしい――を、つれてお暇するとしますか」
そんなシモンの背中を見やって、ピクシーがほんの少し戸惑い、声をかける。
「後始末を頼んでおいて悪いんだが、片付いたら――よかったらまた来てくれ」
「怪我人だぞ。ちっとは労わってくれよ」
シモンはまんざらでもないというように笑うと、アルチデの体を引きずって階段を下りていった。
彼らにとって、一体人はどこまでが人であるのだろうか。死んでしまえば、誰もがただの物体――・・・
簡単には受け入れられそうもないショックを抱えて呆然としていると、ピクシーが私に話しかけてきた。
「さっき、アンタ――”何のために戦う?”と聞いたな」
私はピクシー――”片羽”に顔を向けなおし、頷く。
「俺は、探すために戦っているんだ。」
そう言う彼の顔は、何故か晴れ晴れとしていた。
今、この瞬間、私の中のジャーナリスト魂が再びチリチリと燃え上がり始めるのを、私ははっきりと感じ取っていた。

”片羽”のその表情は、奇遇にも――私が今までに会ってきた人物たちと、全く同じだったのだ。




念のために目の前で編集するという条件つきで、カメラを回させてもらった。
あれだけ激しい扱いをしたのに、カメラは意外に丈夫だった。
彼はゆっくりとした口調で、私に話してくれる。
私は手元でメモを取りながら、その話に聞き入る。

よし、それじゃあ取材に入ろう。
何から聞きたい?


貴方は昔、某空軍基地で小隊の二番機を務めていたと聞きましたが、そのときの一番機の人物――鬼神について、お伺いしても宜しいですか?

(苦笑)よく調べ上げたな。
あいつか。
ああ、知ってる。
・・・話せば長い。古い話だ。


彼は、どんな人物でしたか?

そうだな――
知っているか?
エースは3つに分けられる。
強さを求める奴、プライドに生きる奴、戦況を読める奴。
――この3つだ。
奴は――たしかにエースだった。


・・・彼との出会いはいつ?

開戦ちょうど一週間後――
あれは雪の降る、寒い日だった。


それは何かの任務ですか?

ああ。初めてあいつと飛んだ任務は・・・
爆撃部隊の迎撃だったかな。
そう、あの雪の日が始まりだった。


そのときの彼への印象を教えてください。

最初の印象は・・・
そうだな、筋は良かったな。


彼は、その時点からエースだったのですか?

いや。来た当時は、無名の変人だったよ。
そう、・・・(苦笑)、あいつはたしかに変人だった。


いつからエースと言われるように?

いつとは明確にいえないが――、最初からじゃない。
場数を踏む度、あいつの強さが目についた。ひたすらに強い。
だんだんとあいつは周りに認められていったんだ。
気がつけば、いろんな奴があいつを見てた。
出撃のたび、見送りが増えてたなあ。・・・他の傭兵も、整備兵までもだ。
皆あいつの姿を目に焼き付けようとしてた。
俺も――もう少し見ていたかった。
・・・その頃からかな。


・・・彼は、周りや貴方の目で見るに、どんなエースでしたか?

そうだな・・・・・。
戦場がどこであろうとも、純粋に力を信じてた。
そして瞬時に戦況を見極め――戦況を変える。
戦いの申し子。鬼神と呼ばれるのも納得だ。
・・・並んで飛ぶこっちは苦労するがな。(苦笑)


鬼神に関する記述の中で、特にベルカ公国のレーザー兵器の破壊において、目覚しい成果を挙げたようですが、そのことについてお聞きしても宜しいですか?

ああ。――よく調べたな。
レーザー兵器自体は・・・
その前の作戦・・・そうだな、一週間前くらいから、既に使われ始めていたんだ。
俺たちの参加する作戦で使われたこともあった。
・・・あれは酷い状況だった。
仲間も大分やられた。
俺たちはエースと言われ、他の者から憧れられもした。
・・・だが、上から見れば、俺たち傭兵の代わりなどいくらでもいる。
でも――俺たちは生き延びた。
生き延びなければ、エースにはなれない。
不死身のエースなど、戦場にはいない。


1995年6月6日、覚えてますか?
あの日――ベルカによる自国への7つの核の使用がありましたが、その時、貴方と鬼神の彼は、何をしてましたか?

・・・・。
ちょっといいか?



そう言って、彼は私にカメラを止めるように言った。
私はメモを止め、カメラも止める。
彼は椅子から立ち上がり、銃を持って入り口へと歩いていく。
そして階下を覗き込んで、そこにいた誰かと二言、三言言葉を交わし、また戻ってくる。
現れたのは、シモンだった。
「お邪魔するよ。・・・いいのかい?」
後半は、ピクシーに向けられた言葉のようだった。
”片羽”は頷くと、再びパイプ椅子に座った。
私は再びカメラを回そうとするが、”片羽”にやんわりと止められた。
「ここからは少しオフレコで頼む」
私は手を止め、頷いてもとの場所に戻る。
シモンは、部屋の隅の瓦礫に腰掛けた。
「シモン、よかったらお前にも聞いて欲しいんだ。・・・そうだな、そろそろ告白のし時なのかもしれない」
話を振られたシモンは、表情ひとつ変えず、口を引き結んだままピクシーを見やっている。
「トンプソン、俺とあいつ――鬼神のこと、どこまで調べた?」
私はメモ帳をめくり、答えを思案する。
恐らく彼は、自分の過去――テロリストグループへの加盟を気にしているのだろう。
「”国境無き世界”」
私は簡単な単語を口にした。
彼は、それで全てを理解したようだった。
「その口ぶりだと――他の奴らにもきっと会ったんだな。」
「・・・名前を挙げても?」
私はちらりとシモンに目を配り、次に”片羽”に視線を戻す。
”片羽”は構わないというように、首を縦に振る。
「今更、メンバーにもう意味はない」
私はメモ帳をめくりながら、その名前を挙げ連ねる。
マルセラ・バスケス。ジョシュア・ブリストー。アンソニー・パーマー。アントン・カプチェンコ。
その最後の名前に、ピクリと”片羽”の眉が上がる。
「奴はまだ生きているのか?」
私は首を横に振る。
「彼は1995年、12月31日に戦死しています。ホルツ共同墓地に葬られていました。」
「・・・・・。」
”片羽”の表情は、ピクリとも動かなかった。
口を引き結び、その黒い瞳を出会ってから変わらぬ鋭さで真っ直ぐに私に向け続けている。
私は口にしたものか迷ったが、結局”そのこと”については黙っていた。
「随分、調べ上げたんだな――・・・」
ピクシーはそう呟くと、ほんの少し顔を翳らせた。
「ひとつ聞いていいか?」
そんなピクシーが、私に向かって質問を投げかける。
「どうぞ」
「アンタは、何故そこまでして”鬼神”のことを調べるんだ?」
そのときの私には確信があった。そして口を開く。
「僕も、彼に”変化”を貰ったからですよ」

おそらく――今私は、彼に関わった皆と同じ表情をして、微笑っているのだと。


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