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あおはとのゲーム雑記。元々AceCombatブログでしたが今はいろいろ・・・
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≪沈黙の片羽≫
エースコンバットZEROの読み物。
ベルカ戦争を駆け抜けた鬼神の姿を、登場人物の視点から振り返る

REVEAL ONE
エースコンバットの世界で
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REVEAL ONE
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空軍基地は、数日前に私が降り立った時と、何ら変わりない騒がしさを保っていた。

私はこの旅の間抱え続けたキャリーバックを後ろに従え、まずは事務所に向かう。
私を連れる馬車引きの背中にも、数日前と変わった様子は見られなかった。
彼は特に私と何を話すでもなく、事務員を呼ぶと、退屈そうに外へと出ていった。
私は肩透かしを食った気分でその後姿を見送る。相変わらずのマイペースぶりである。
そんな背中と入れ違いにやってきた事務員が、書類や冊子を机の上に広げて出国に向けての説明をしだす。
彼は私にとってもう慣れ親しんだこの儀礼を手際よくこなし、今立っているこの国から出ていく手筈を整えてくれた。
どうやら私は、今夜この基地を飛び立つことになっているらしい。

手続きを終えてドアの外に戻ると、馬車引きは背を向け、滑走路や格納庫の機体を眺めているところだった。
私はそんな彼に声を掛け、一通りのことを話す。
彼は左から入る言葉を軽く右に流し、一方で遥か遠くの機体を目で追い続けていた。
聞いていたのかいないのか、話が終わると彼は
「オーケー、じゃあ時間にな」
と言い、私に対してあっさり背を向けた。
普通の人間なら、もう二、三言軽く質問をするほどの愛想はあるもんなのじゃないだろうか。
私はそんな彼の背中でこっそりと肩をすくめる。
世の中にはいろいろな人間がいる。
そんな馬車引きの向いた先から、一人の小柄な男性が小走りでやってくる。
黒髪に、黒瞳の大きい顔立ち。少なくとも、オーシアでは見ない人種のようだ。
馬車引きもそれを見留めて、そのつま先を止めた。
その人物はこちらにやってくるなり、きりりと吊りあがった目で馬車引きに人差し指を突きつけ、声を大にして叫ぶ。
「勝ち逃げは許されない。勝負だ!!!!!!!!」
青年の手には、手垢にまみれたトランプのカードが握りしめられていた。


馬車引きは苦笑とも挑戦的ともわからない笑みを片方に浮かべると、その青年の後に従った。
することがないので、私もキャリーバックを引きずって二人の後に従う。
どうやら、二人は私が”片羽”を追っている間中、カードゲームに興じていたらしい。
青年は”ユーニ”というそうで、自己紹介もそこそこに、今日こそ馬車引きを負かすと始終息巻いていた。

そこは意外にも清潔に掃除された娯楽室だった。
その四足のテーブルを挟んで、二人は向かい合う。
「いや、どうせだから3人でやろう。人数はそんな関係ないしな」
私も混ざることになり、ユーニが手馴れた手つきでカードを配り始めた。
馬車引きが火をつけないシガーを咥えながら、私に問いかける。
「ブラックジャックって知ってるか?」
そんな私の目の前に、二枚のカードが表と裏で配られる。
私が軽く頷くと、彼は再びニヤリと笑った。
「ディーラーは居ないから、勝ったヤツが全額をいただくルールだ。煙草一本が」そう言って彼は胸ポケットから別の安い煙草を取り出して、テーブルに並べる。「5$な。」
「ベッドは基本煙草1本。ダブルダウンはもう一本。サレンダーはなしだ。スプリットも・・・今回はなし。」
三人の前に、それぞれ表と裏にされたカードが配られる。
「一枚はオープンで配られる。もう一枚は本人だけが見ていい。合計が21に近ければスタンド、もう一枚引きたければヒットかダブルダウンをする。相手の手札を見てよく決めるんだな」
「さて」
そういって、ユーニが軽くテーブルに両手をつく。
「まぁ記者さんは初心者そうだから手加減してやるよ。かかってきな、馬車引き!」
馬車引きは鼻で笑うと、裏にされたカードを確認する。
私もそれに習い、自分のカードを確認した。
表にされたカードは3。裏になったカードは9。合計12。
これではとてもじゃないが、勝ち目はない。
馬車引きの前にはスペードの8、ユーニの前にはQのカード。
ユーニが得意げな顔で裏にされたカードを確認した。
「ふっふっふ、今日の俺はツイてるぜ!」
「泣きっ面かくなよ」
そういって、彼はもう一枚カードをユーニからもらう。ついでに私ももう一枚もらった。
配られたカードはオープンにするらしい。馬車引きに倣って、私も二枚のカードを机の上に表で並べる。
3とK。手元のカードは9。合計22だ。
・・・さっそくやってしまったようだ。
一方馬車引きの机の前には8とKのカードが並んでいた。
そのカードを眺めてユーニがにやにやと笑う。一方で馬車引きは無表情だった。
「いいな?さあ、勝負だ!」
全員のカードがオープンになる。
私の前に3・K・9。ユーニの前にはQと10。馬車引きの前には、8、K、3が並んでいた。
ユーニの表情が瞬時にして強張る。
そんな顔をまじまじと眺め、口端を持ち上げてテーブルの上にあった煙草三本を掴みながら、馬車引きが余裕たっぷりの口調で囁く。
「まずは一勝。さて、お次は?」
ユーニが誰に頼まれるでもなく、電光石火の勢いで再びカードを引っ掴み、それぞれに投げ渡した。



40分ほどそうして興じていただろうか。
馬車引きの目の前には比較的多数の煙草が転がり、私の前にも数本の煙草が残っており、ユーニの前にも数本の煙草が転がっていた。
カードが大体一周を終え、二周目に入りだした頃から、それまで無難な数字だった馬車引きのスコアは、目に見えて伸びだした。まさに負け知らず、といった奮戦ぶり。
カードは少なくとも、4周はしただろう。
たまりかねたのか、頭髪を毟らんばかりの勢いで掴んで、ユーニが叫ぶ。
「だぁあああああああ勝てねぇエエエエーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」
彼の煙草の数は、私よりも少なかった。
もしかしなくとも、賭け事に向いていないんじゃないだろうか、という考えが私の頭の中を過ぎる。・・・口には出さないが。
「なんでそんなに強いんだ、なんで勝てないんだ!教えろっ、
クッソーーーー!!!!」
そんなユーニに向かってにっこりと笑いかけると、馬車引きはおもむろに煙草の束を差し出した。
「勘が悪いのさ」
ユーニはその手に札束を叩き付けた。




小金を巻き上げた馬車引きは、席を外すとそのままどこかへと消えた。
私は残ったユーニに、どこか仮眠ができるような場所はないか尋ねる。
彼は勝負のことでまだ悔しそうにしていたが、申し出に対しては快く案内してくれた。
「くそー、あんな厭味なヤツだとは思わなかった!挙句帰ってこねーし!」
「彼はここにいる間中ずっとカードゲームを?」
「毎晩な。それ以外はずっと格納庫の番付きさ」
案内された場所は、仮眠室だった。
「時間になったら起こしてやるよ。俺も飛ぶことになってんだ。・・・送り狼だけどな。」
気のせいか、笑顔が陰険に見える・・・気がする。
「・・・穏便に頼みます」
「はっは、冗談・・・。だよ。」
座った瞳でにっこり笑うと、ユーニはドアノブに手をかける。
そして思いついたように、突然こちらを振り返った。
「そういえば、”片羽の妖精”には会えたのか?」
私は唐突な質問に面食らいながらも頷く。
「お陰様で。」
「そっか。こんな時期に取材たぁブンヤも大変だなあ。あ、報道記者だっけ。・・まあ一緒か」
私は苦笑を返す。
彼は意味ありげに私を一瞥すると、
「じゃ、またな」
そう言って部屋を出て行った。




あいつのいる場所は、探すまでもなく予想がついていた。
怒声、爆音、騒音、オイルや機械独特の匂い、熱気をはらんだ空気の匂い。
さながらサボりの整備員のように、目立たない隅っこで、葉巻でも吹かしているのだろう。
真っ直ぐに格納庫に向かってくる俺を見つけ、そいつの眼だけがきょろりと動いた。またお前かっていう顔だ。
悪かったな、しつこくて。
俺は、行儀悪くヤンキー座りで葉巻を煙らすそいつの斜め前に立つ。
以前真正面からカードの勝負を挑んだところ、問答無用で投げ飛ばされて夜が明けたことがあったからだ。
「こんな隅っこでヤニとは、お前は不良学生か!」
びしっと指を突きつけて騒音に負けないよう怒鳴るも、目の前の男は知らんぷりを決め込んでいた。
こいつは、俺の知っている数年前のこいつと全く変わっていなかった。
俺は口をひん曲げてため息をつく。
「煙草は体に悪いんだぞ。肺活量も落ちるし、判断力も鈍る。最近じゃ肺ガンの原因だとか言われてるくらいだぞ?」
だが、目の前の男の視線ははるか遠く、滑走路上の機体に添えられたままで、俺のほうを見ようともしない。
熱気でゆがむコンクリート上には、数機のF/A-22Aがタキシングを行っていた。
「あの記者に、話とか聞かなくていいのか?」
「・・なんの」
上の空で返された返事には、まるで気がない。
俺は頭にきてヤツの咥えていた葉巻をひったくり、怒鳴る。
「お前な、もう少し友人は大事にしろよ!今回会わなかったらもう二度と会わずに終わるかもしれないんだぞ、少しは気にならないのか!?」
観念したようにゆっくりとこちらに向けられた灰色の瞳は、俺が想像したのとは異なり、怒りを湛えてもいなかったし、意表をつかれたようでもなかった。
「・・・返せ。ガキの火遊びは火事の元だ」
「俺の言ったこと、聞いてたか!?」
まだ白を切るその言葉に俺が怒鳴り返すと、無表情だったそいつの顔が、渋い表情に歪められた。まるで「世話のかかるガキだ」とでも言いたげな表情だった。
問答を諦めたのか、差し出した手を引っ込め、そいつは再び滑走路に目をやる。まぁた無視する気なのか。
俺が再び声をあげようとしたところで、目の前の男がふと立ち上がった。俺よりも頭ひとつ分大きい。そしておもむろに格納庫の外へと歩を進める。
意気を殺がれた俺も、その肩を追いかけて外へと出る。
真昼の日差しの降り注ぐ白いアスファルトの上に立つと、左手を翳してそいつは空を見やった。
「・・・ユージアの空はいい空だな」
「・・・は?」
俺もつられて空を仰ぐ。
今しがた飛び上がったばかりのラプターたちが、青い空に白い飛行機雲を引いてゆったりと旋廻していく。
遠くてよくわからないが、先頭を飛ぶのは恐らくメビウス1だ。
「俺みたいな”ならず者”でも飛べるほどに穏やかだが―――凛と澄んでいる。・・・英雄どのに似てるな。」
「・・メビウスに」
俺は隣の男の顔を見やり、そしてまた空を見上げた。柔らかで薄い雲が粉砂糖のように空に散っていた。空気は肌寒くなりつつあるが、空はますます綺麗になる時節だ。
柔らかい青、凛と澄む空気。
たしかに、メビウス1に似ているような気がする。
「英雄どのはいつも編隊長なのか?」
「あー、いや、チョット前までは単独任務が多かったみたいだけど・・・最近は落ち着いてきたからかな。中隊長だったり小隊長だったり。色々さ」
「そいつは窮屈だろうな」
「全くで。毎回降りてくるたびに肩が凝ってそうだよ」
隣の男は苦笑めいた笑いを小さく漏らすと、安い煙草をポケットから取り出して口に咥えた。どうやら、何か口に咥えてないと落ち着かない性分らしい。
「・・・話、はぐらかすの上手だな」
俺が皮肉ってやると、頭の後ろをさすりながら「お陰さまで」と言った。
そして小さなため息を鼻から押し出すと、もう一度こちらに顔を向け、手を差し出す。どうやら、葉巻を返せということらしい。
俺は口をへの字にしつつも、返してやった。吸いたきゃ吸え。もう知らん。
そいつは返してもらった葉巻を煙草の換わりに旨そうに一口ふかすと、滑走路のはるか端をみやったまま呟くように言った。
「・・・メビウスリングって知ってるか」
「・・?」
俺は咄嗟に質問の意味が掴めずに沈黙した。
「英雄殿のエンブレムにあるアレだ」
そういって、ヤツは葉巻で青い空を指す。
紫色の煙が、メビウスを追って高みへとたなびいていった。
俺は、その先にあるメビウス1のラプターの尾翼を思い浮かべる。たしかにエンブレムには、ユージア大陸を囲む表が青で、裏が黒のメビウスリングが描かれている。
「メビウスリングぐらい知ってらあ」
俺はわざとぶっきらぼうに返事をする。
「あれ、切ったことあるか」
俺は唐突な切り返しに、またもや意味が掴めずに沈黙した。
コイツの話は、筋立てというものが無茶苦茶すぎる。
「帯を横切るように切れば、リングはただの帯となる。だが、帯にそって二つに切れば、リングは繋がったままねじれと長さだけが増える。」
「・・・? なんのこっちゃ?真っ二つになるんじゃないのか。」
「二つのリングの表裏を繋げたのがメビウスリングだ。やってみろ。」
「・・・つまりなにが言いたいんだ?」
俺はイラついて、話をせかす。
「俺たちは、その表裏なんだとよ。あいつはそれを断ち切りたがってたみたいだけどな。だから、俺を墜とす必要があった」
「・・・」
俺は、コイツと”アイツ”の間に何があったのか知らない。
そう、今回再びめぐり合えたこと自体が出来すぎた偶然なのだ。
「・・・なんかあったんか」
俺の訝しげな問いを、
「いや」
そう短くさえぎって、ソイツはもう一口葉巻を吹かす。
「ちょっと、捻り方が俺とアイツで違っただけさ。同じ場所を飛んだ。違う向きで抜けた。―――それだけさ」
「・・・」
意味が、さっぱりわからない。
それくらい俺とコイツの間には遠い隔たりがあり、”アイツ”とコイツの間には、見えない何かで繋がっているのだろう。
腑に落ちないそんな俺の顔を横目に、ヤニ野郎は再び軽く煙をふかす。
「まあ片羽のことだ。なんだかんだで上手くやってるだろう。・・・”悪いヤツは死なないもんだ”」
「・・・」
「あいつならここで何かを見つけれるだろうよ。この空は繋がってる。だから、お前さんが言うように会う必要はない」
ここまできて、やっと俺にもその言葉の意味が解った。
どうやら、コイツなりの言葉で、俺の糾弾に答えようとしていたらしい。
だが、俺は頬の内側を噛んだまま、つま先に視線を落とした。しばらくして砂埃を靴裏で蹴っ飛ばす。
「意味、わっかんねえよ。」
「そんなこともあるさ」
野郎は事も無げに呟くように言い、もう一口だけ葉巻を吹かす。
そして思いついたように懐から何かを取り出す。それは、俺には大いに見覚えのあるものだった。
「やるよ」
一枚の大き目の茶封筒。俺がそれを受け取ると、俺との会話が終わったとばかり葉巻の火を消し、背を向けて格納庫から立ち去っていった。
袋の中を覗く。

俺は、胸の内にふわりと暗雲が掠めるのを感じる。
きっとあいつが話したことが全てじゃない。たぶん、もっと暗くて見えにくい何かの中で―――あいつは動いてる。
粉々の消し炭になった俺のデータディスクが、その一端の闇を表していた。

日が落ち、フライトの時間が迫っていた。
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