あおはとのゲーム雑記。元々AceCombatブログでしたが今はいろいろ・・・
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【ローゼライン作戦】 1995/04/15 10:20 アルロン地方
その日、朝一番で私は司令室に呼ばれた。
その日、朝一番で私は司令室に呼ばれた。
本日1020時からは、作戦本部が決定した”ルート171奪還作戦”であるローゼライン作戦が敢行されることになっていた。
私が基地司令室に呼び出しをされたのは、そんなローゼライン作戦のブリーフィング前、まさに朝一番だった。
心なしか、嫌な予感がする。
私は司令官室前で足を揃え、意識して胸を張る。
コン、コン。
「ハロルド・サヴァツキー少佐、参りました。」
「入りたまえ」
すぐに中から芯の通った声で応答があり、私はそっとノブを引いて中に入る。
私は司令官―――ハーゲン・キルヒアイス大佐のデスクの前に敬礼をし、直立姿勢をとる。
つい先日会ったばかりの基地司令官は、まるで先日の延長のように後ろに参謀を従え、私の顔を同じように両拳を顎に乗せた体勢で見やっていた。
私は軽いデジャヴを覚える。
司令官は言葉を選ぶように、おもむろに口を開いた。
「君の作戦指揮能力は、私はもちろんのこと、作戦本部も高く評価している。」
「は」
歯切れの良い返事をしておきながら、私の心はどんどんと憂鬱になっていた。
上官がこのような物言いをする場合、大概が部下にとって幸福な内容の通達ではないことがこの職場での常識であることは、言うまでもない。
「そこで、貴君に重要な作戦の指揮を執ってもらうことにした。」
「・・・」
私の頭を、ちらりとある男の顔がよぎる。嫌な予感はいまや暗雲となって胸の内に立ち込めていた。
そんな私の微妙な心境をものともせず、彼はその言葉を続ける。
「貴君には本日1020時決行のローゼライン作戦―――わが軍とオーシア軍の陸路輸送ルートを確保するための、重要な作戦の指揮を任せる。」
「・・・」
「ウスティオ正規軍は今や壊滅状態にあり、この状況を打破するには、もはや外国人傭兵部隊である彼らに賭けるしかない状況であることは、了解しているな?」
「・・・・・・・は」
私の頭の片隅に、例の傭兵の顔がちらりとよぎる。
「先日の迎撃任務の成績を見るに―――この編成は成功のようだ。私を含め、司令部もしばらくこの編成のまま事態の改善を図りたいと考えている。」
「・・・・・・・・・」
「貴君には、この傭兵部隊の指揮をとってもらう。本作戦の指揮はウスティオの命運を分ける重要な任務となる。責任は重大だ。」
反論の隙も与えず、一気にそこまで言ってのけると、ヴァレー空軍基地司令官は初めてにっこりと笑った。
「―――以上、貴君の活躍に期待しているよ。」
アルロン地方、ルート171。
この作戦は、アーレ川・エムス川をまたぐ三つの橋の奪還が目的だった。
このルートを確保することが出来れば、ウスティオはオーシアからの陸路による後方支援を受けることが出来るようになる。
このことは、不当な侵略によって制圧されたウスティオを取り戻すための、大きな踏み台となるだろう。
アルロン地方にむかって飛行する俺たちの周りには、3機のF-15C―――正規軍の生き残りだ―――が飛行していた。
地上部隊の援護は、ない。
―――なんともやる気の奮い立たされる作戦だ。
右斜め前を飛行する相棒は、先日の作戦に引き続いて相変わらずの無言だった。
そんな俺たちに、一本の無線が舞い込む。
≪こちらAWACSイーグルアイ、ガルム隊へ≫
毎度の事ながら、俺は密かに舌を巻く。
AWACSが導入できるほど、ウスティオは裕福な国らしい。
あるいは、先見の明のある幹部が、今回のように隣接するベルカの空軍に侵略されるのを恐れ、最優先で早期警戒管制機を導入したのかもしれない。
だが、結果は目の前に布陣され、広がっている通りだ。金に飽かせるだけではどうにもならないこともある。
・・・もっとも、俺はそんな暖かい懐から出る報酬の良さに惹かれ、ウスティオ傭兵部隊に入隊しているわけだが。
≪攻撃目標は幹線道路沿いに布陣。作戦を開始せよ≫
開戦以降、日を追って仏頂声になっていくイーグルアイの無線に口端を持ち上げながら、俺はガルム1の分まで反応を返す。
≪AWACS、上からちゃんと見といてくれよ≫
だが俺の軽口など歯牙にもかけず、イーグルアイは事務的な発破を返す。
≪輸送ルートを封鎖するベルカ地上部隊を叩き潰せ≫
どうやら、今日は特につまらないことがあったらしい。
俺は軽く肩をすくめ、自分自身に向かって言葉をかける。
≪生命線になるルートだ。奪還するぞ≫
サイファーは心得たとばかりに、今日も両翼を軽く振った。
眼下を曲がりくねる川沿いに布陣しているベルカ軍は、地上軍ばかりだった。
迫り来る俺たちを見つけると、早速その砲身をこちらに向け、果敢にも橋の上に陣取ったまま狙いを定めにかかる。
≪こいつら、ウスティオから来やがったのか?≫
≪奴らも必死というわけか。だがここを明け渡すわけにはいかん≫
必死なのはお互い様だ。
俺は橋の上のタンクに狙いを定めると、ミサイルの発射ボタンを押す。
≪ガルム2、FOX2≫
的となり、爆炎を上げて破壊される戦車。その横の対空機銃を、やや遅れて飛びぬけるサイファーが後方から狙撃する。
俺は橋に沿って飛び、反対側に陣取る戦車にも、同じように狙いをつけた。
それに気づき、俺の機体に照準を合わせようとする戦車に、引き続き低空で進入したサイファーが煙に隠れて威嚇射撃をする。
≪向こうにもいるぞ、狙撃されている!後退しろ!≫
≪ガルム2、FOX2≫
慌てて後退しようとキャタピラを急回転させる戦車に、俺の放ったMSSLが直撃する。
その頃には低空を飛んでいたはずのサイファーは、いつのまにかと上空へと戻ってきていた。
相変わらず指示もなく、会話もない。
だが、サイファーは喋らない分だけ上手くこちらに合わせてくれているようだった。
ガルム1が再び俺の右前に戻り、俺達は再び編隊のポジションと高度を保つ。
俺は次の目標を探すべくレーダースクリーンに目をやる。今回は地上目標ばかりの任務のようだ。俺達は爆撃部隊か。
次にHUDに目を戻した時、俺はふと違和感に気づく。
≪・・・攻撃対象に民家がある。あれも作戦内か?≫
HUDの目標コンテナ内に示されているのは、明らかに軍事施設ではない、ただの民家だった。
まあ、表向きは民家の様相をしていても、中身はどうなっているか分かったものではないが・・・
≪潰しておくか?≫
俺は操縦桿のトリガーに触れる指に、心持ち力を込める。
だがすぐに自分の身分を思い出し、俺は思いなおしてその手を外す。
≪・・・判断は一番機に委ねる≫
サイファーは聞こえているのかいないのか、特に機体を動かしもせずにその上空を通り抜けた。
どうやら、やたらに攻撃する気はないらしい。
しばらく進むと、倉庫の群れの中に隠れるようにして、対空機銃が設置されている地区に差し掛かる。
同時に、ようやく現れた敵の航空部隊が、こちらに迎撃の穂先を向けつつあった。
サイファーは一旦高度を下げ、低空で畑の上から侵入するルートをとる。そして後ろに従う俺に注目を促すように、再び両翼を軽く振り、軽く機首を上げる。
先ほどの飛び方から考えるに、恐らく上空の敵を引き受けるつもりなのだろう。
俺は声に出して了解の意図を伝える。
≪了解、地上に火力を集中させる≫
それを聞き届けたサイファーは、くるりとハーフロールをうち、速度を殺したまま上空へと戻っていった。
―――さて、こちらは少し稼がせてもらうとするかな。
俺は目標群に近づくと、対空機銃を狙撃しやすくするため、また、相手の視界を塞ぐために倉庫を2,3棟狙撃し、発火させる。
敵の機銃が低空で旋廻する俺の機影を追うも、砲身の回頭が追いつかず、その弾は翼にかすりもしない。
俺はHUDに表示された目標コンテナのうち、ボアサイトモードを使って対空機銃にロックを合わせ、見通しの良い角度からMSSLを発射する。
周囲を煙で囲まれた敵機銃は、目標に弾を当てることも出来ないまま、衝撃で粉々になった。
≪対空機銃を破壊≫
≪状況報告、施設の損害を確認!≫
≪無差別に攻撃してくるぞ!≫
そうしている目の前でもまた、錐揉みしながら墜ちてきた敵機が倉庫に突き刺さり、大爆発を起こす。
壊してるのは俺だけじゃないぞ。
それに、生き残るための必要最低限の破壊なら、無差別とはいわない。
俺は自分を納得させるように小さくつぶやく。
≪戦闘が終わった頃にはどうせまた別の顔になるんだ≫
そうしてレーダーや上空の視界に注意しながら高度を上げてみれば、サイファーが引き受けたはずの敵戦闘機は、今しがた目の前でサイファーにまた1機が喰われ、残すところあと1機となっていた。さすが、片付ける手際がいい。
≪こちらクリティカー。機体制御不能、脱出する≫
目の前で撃墜されたばかりのF-1のパイロットが機体を捨て、大空へと跳び下りていく。
俺は、残った一機―――サイファーのケツに付こうと躍起になっているドラケンの後ろにぴったりとくっつくと、ガンレクティルを合わせ、トリガーを引いた。
≪のわっ!?クソ、機体に風穴が開いた!≫
弾は運よくエンジンにヒットしたらしい。推力を失って失速する機体が、黒煙を上げながらだんだんと地面に引き込まれていく。
≪機体損傷、上手く飛べない。畜生また減俸か!≫
機体を捨て、ベイルアウトをするパイロットを尻目に、俺は相棒の横に付け直した。
≪≫
相棒はほんの少し無線を開き、両翼を軽く振った。礼のつもりらしい。
≪なに、お互い様さ≫
そんな俺たちにイーグルアイの無愛想な無線が合いの手を入れる。
≪作戦は順調に進行中。残存部隊も撃破せよ≫
≪ピクシー、了解。・・・スピーディに片付けるぞ、相棒≫
サイファーは任せろと言わんばかりに勢いよく翼を一回転させると、風を切って再び低空へと落ちていった。
その日、ベルカ側の激しい抵抗にもかかわらず、作戦開始から10分と経たずにルート171はウスティオの手に奪還された。
作戦の成功を告げるイーグルアイの声も、心なしかほっとした響きを持っていたような気がする。その証拠に、彼は行きのお返しとばかりにクールな皮肉を投げかけてきた。
≪悪運は今日も味方だったな、―――”片羽”≫
≪・・・ああ≫
俺は思わず苦笑しながら、大きく息を吐く。
≪翼なしの帰還は、もうお断りだ≫
相棒と組む二度目の作戦。
一言も喋らない非常識な相棒にも関わらず、俺は意外にも―――別段やりにくいものを感じてはいなかった。
私が基地司令室に呼び出しをされたのは、そんなローゼライン作戦のブリーフィング前、まさに朝一番だった。
心なしか、嫌な予感がする。
私は司令官室前で足を揃え、意識して胸を張る。
コン、コン。
「ハロルド・サヴァツキー少佐、参りました。」
「入りたまえ」
すぐに中から芯の通った声で応答があり、私はそっとノブを引いて中に入る。
私は司令官―――ハーゲン・キルヒアイス大佐のデスクの前に敬礼をし、直立姿勢をとる。
つい先日会ったばかりの基地司令官は、まるで先日の延長のように後ろに参謀を従え、私の顔を同じように両拳を顎に乗せた体勢で見やっていた。
私は軽いデジャヴを覚える。
司令官は言葉を選ぶように、おもむろに口を開いた。
「君の作戦指揮能力は、私はもちろんのこと、作戦本部も高く評価している。」
「は」
歯切れの良い返事をしておきながら、私の心はどんどんと憂鬱になっていた。
上官がこのような物言いをする場合、大概が部下にとって幸福な内容の通達ではないことがこの職場での常識であることは、言うまでもない。
「そこで、貴君に重要な作戦の指揮を執ってもらうことにした。」
「・・・」
私の頭を、ちらりとある男の顔がよぎる。嫌な予感はいまや暗雲となって胸の内に立ち込めていた。
そんな私の微妙な心境をものともせず、彼はその言葉を続ける。
「貴君には本日1020時決行のローゼライン作戦―――わが軍とオーシア軍の陸路輸送ルートを確保するための、重要な作戦の指揮を任せる。」
「・・・」
「ウスティオ正規軍は今や壊滅状態にあり、この状況を打破するには、もはや外国人傭兵部隊である彼らに賭けるしかない状況であることは、了解しているな?」
「・・・・・・・は」
私の頭の片隅に、例の傭兵の顔がちらりとよぎる。
「先日の迎撃任務の成績を見るに―――この編成は成功のようだ。私を含め、司令部もしばらくこの編成のまま事態の改善を図りたいと考えている。」
「・・・・・・・・・」
「貴君には、この傭兵部隊の指揮をとってもらう。本作戦の指揮はウスティオの命運を分ける重要な任務となる。責任は重大だ。」
反論の隙も与えず、一気にそこまで言ってのけると、ヴァレー空軍基地司令官は初めてにっこりと笑った。
「―――以上、貴君の活躍に期待しているよ。」
アルロン地方、ルート171。
この作戦は、アーレ川・エムス川をまたぐ三つの橋の奪還が目的だった。
このルートを確保することが出来れば、ウスティオはオーシアからの陸路による後方支援を受けることが出来るようになる。
このことは、不当な侵略によって制圧されたウスティオを取り戻すための、大きな踏み台となるだろう。
アルロン地方にむかって飛行する俺たちの周りには、3機のF-15C―――正規軍の生き残りだ―――が飛行していた。
地上部隊の援護は、ない。
―――なんともやる気の奮い立たされる作戦だ。
右斜め前を飛行する相棒は、先日の作戦に引き続いて相変わらずの無言だった。
そんな俺たちに、一本の無線が舞い込む。
≪こちらAWACSイーグルアイ、ガルム隊へ≫
毎度の事ながら、俺は密かに舌を巻く。
AWACSが導入できるほど、ウスティオは裕福な国らしい。
あるいは、先見の明のある幹部が、今回のように隣接するベルカの空軍に侵略されるのを恐れ、最優先で早期警戒管制機を導入したのかもしれない。
だが、結果は目の前に布陣され、広がっている通りだ。金に飽かせるだけではどうにもならないこともある。
・・・もっとも、俺はそんな暖かい懐から出る報酬の良さに惹かれ、ウスティオ傭兵部隊に入隊しているわけだが。
≪攻撃目標は幹線道路沿いに布陣。作戦を開始せよ≫
開戦以降、日を追って仏頂声になっていくイーグルアイの無線に口端を持ち上げながら、俺はガルム1の分まで反応を返す。
≪AWACS、上からちゃんと見といてくれよ≫
だが俺の軽口など歯牙にもかけず、イーグルアイは事務的な発破を返す。
≪輸送ルートを封鎖するベルカ地上部隊を叩き潰せ≫
どうやら、今日は特につまらないことがあったらしい。
俺は軽く肩をすくめ、自分自身に向かって言葉をかける。
≪生命線になるルートだ。奪還するぞ≫
サイファーは心得たとばかりに、今日も両翼を軽く振った。
眼下を曲がりくねる川沿いに布陣しているベルカ軍は、地上軍ばかりだった。
迫り来る俺たちを見つけると、早速その砲身をこちらに向け、果敢にも橋の上に陣取ったまま狙いを定めにかかる。
≪こいつら、ウスティオから来やがったのか?≫
≪奴らも必死というわけか。だがここを明け渡すわけにはいかん≫
必死なのはお互い様だ。
俺は橋の上のタンクに狙いを定めると、ミサイルの発射ボタンを押す。
≪ガルム2、FOX2≫
的となり、爆炎を上げて破壊される戦車。その横の対空機銃を、やや遅れて飛びぬけるサイファーが後方から狙撃する。
俺は橋に沿って飛び、反対側に陣取る戦車にも、同じように狙いをつけた。
それに気づき、俺の機体に照準を合わせようとする戦車に、引き続き低空で進入したサイファーが煙に隠れて威嚇射撃をする。
≪向こうにもいるぞ、狙撃されている!後退しろ!≫
≪ガルム2、FOX2≫
慌てて後退しようとキャタピラを急回転させる戦車に、俺の放ったMSSLが直撃する。
その頃には低空を飛んでいたはずのサイファーは、いつのまにかと上空へと戻ってきていた。
相変わらず指示もなく、会話もない。
だが、サイファーは喋らない分だけ上手くこちらに合わせてくれているようだった。
ガルム1が再び俺の右前に戻り、俺達は再び編隊のポジションと高度を保つ。
俺は次の目標を探すべくレーダースクリーンに目をやる。今回は地上目標ばかりの任務のようだ。俺達は爆撃部隊か。
次にHUDに目を戻した時、俺はふと違和感に気づく。
≪・・・攻撃対象に民家がある。あれも作戦内か?≫
HUDの目標コンテナ内に示されているのは、明らかに軍事施設ではない、ただの民家だった。
まあ、表向きは民家の様相をしていても、中身はどうなっているか分かったものではないが・・・
≪潰しておくか?≫
俺は操縦桿のトリガーに触れる指に、心持ち力を込める。
だがすぐに自分の身分を思い出し、俺は思いなおしてその手を外す。
≪・・・判断は一番機に委ねる≫
サイファーは聞こえているのかいないのか、特に機体を動かしもせずにその上空を通り抜けた。
どうやら、やたらに攻撃する気はないらしい。
しばらく進むと、倉庫の群れの中に隠れるようにして、対空機銃が設置されている地区に差し掛かる。
同時に、ようやく現れた敵の航空部隊が、こちらに迎撃の穂先を向けつつあった。
サイファーは一旦高度を下げ、低空で畑の上から侵入するルートをとる。そして後ろに従う俺に注目を促すように、再び両翼を軽く振り、軽く機首を上げる。
先ほどの飛び方から考えるに、恐らく上空の敵を引き受けるつもりなのだろう。
俺は声に出して了解の意図を伝える。
≪了解、地上に火力を集中させる≫
それを聞き届けたサイファーは、くるりとハーフロールをうち、速度を殺したまま上空へと戻っていった。
―――さて、こちらは少し稼がせてもらうとするかな。
俺は目標群に近づくと、対空機銃を狙撃しやすくするため、また、相手の視界を塞ぐために倉庫を2,3棟狙撃し、発火させる。
敵の機銃が低空で旋廻する俺の機影を追うも、砲身の回頭が追いつかず、その弾は翼にかすりもしない。
俺はHUDに表示された目標コンテナのうち、ボアサイトモードを使って対空機銃にロックを合わせ、見通しの良い角度からMSSLを発射する。
周囲を煙で囲まれた敵機銃は、目標に弾を当てることも出来ないまま、衝撃で粉々になった。
≪対空機銃を破壊≫
≪状況報告、施設の損害を確認!≫
≪無差別に攻撃してくるぞ!≫
そうしている目の前でもまた、錐揉みしながら墜ちてきた敵機が倉庫に突き刺さり、大爆発を起こす。
壊してるのは俺だけじゃないぞ。
それに、生き残るための必要最低限の破壊なら、無差別とはいわない。
俺は自分を納得させるように小さくつぶやく。
≪戦闘が終わった頃にはどうせまた別の顔になるんだ≫
そうしてレーダーや上空の視界に注意しながら高度を上げてみれば、サイファーが引き受けたはずの敵戦闘機は、今しがた目の前でサイファーにまた1機が喰われ、残すところあと1機となっていた。さすが、片付ける手際がいい。
≪こちらクリティカー。機体制御不能、脱出する≫
目の前で撃墜されたばかりのF-1のパイロットが機体を捨て、大空へと跳び下りていく。
俺は、残った一機―――サイファーのケツに付こうと躍起になっているドラケンの後ろにぴったりとくっつくと、ガンレクティルを合わせ、トリガーを引いた。
≪のわっ!?クソ、機体に風穴が開いた!≫
弾は運よくエンジンにヒットしたらしい。推力を失って失速する機体が、黒煙を上げながらだんだんと地面に引き込まれていく。
≪機体損傷、上手く飛べない。畜生また減俸か!≫
機体を捨て、ベイルアウトをするパイロットを尻目に、俺は相棒の横に付け直した。
≪≫
相棒はほんの少し無線を開き、両翼を軽く振った。礼のつもりらしい。
≪なに、お互い様さ≫
そんな俺たちにイーグルアイの無愛想な無線が合いの手を入れる。
≪作戦は順調に進行中。残存部隊も撃破せよ≫
≪ピクシー、了解。・・・スピーディに片付けるぞ、相棒≫
サイファーは任せろと言わんばかりに勢いよく翼を一回転させると、風を切って再び低空へと落ちていった。
その日、ベルカ側の激しい抵抗にもかかわらず、作戦開始から10分と経たずにルート171はウスティオの手に奪還された。
作戦の成功を告げるイーグルアイの声も、心なしかほっとした響きを持っていたような気がする。その証拠に、彼は行きのお返しとばかりにクールな皮肉を投げかけてきた。
≪悪運は今日も味方だったな、―――”片羽”≫
≪・・・ああ≫
俺は思わず苦笑しながら、大きく息を吐く。
≪翼なしの帰還は、もうお断りだ≫
相棒と組む二度目の作戦。
一言も喋らない非常識な相棒にも関わらず、俺は意外にも―――別段やりにくいものを感じてはいなかった。
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