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あおはとのゲーム雑記。元々AceCombatブログでしたが今はいろいろ・・・
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REVEAL ONE
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円環には始端も終端もない。
それ故に、両者の距離は無限にも等しく、決めることは出来ない。

―――そのものを、断ち切らなければ。






「納得できかねます」
部屋に入ってくるなり、今にもデスクに身を乗り出しそうな勢いで抗議の言葉を口にしたのは、殆ど黒に近いこげ茶の髪を短く切りそろえ、紺色の制服―――軍服をビシリと着こなした30前半の若い男性だった。
彫りの深い顔立ちに、それぞれの部品がシャープに配置されている。生真面目そうなその表情は、今はキリリと眉の吊り上がった不服モードであった。
「フォルク少尉はわかります―――いや、彼も・・・いや、わかります」
何か含みのあるような言い迷いをしつつも、その男性は続ける。
「ですが―――、これは、・・・・・・」
明らかに言葉に困りつつも不服を示す、その男の青色の瞳は、一枚の書類を指し示していた。
無造作にぽんと数枚の書類が並べられたデスクには、同じく軍服を身につけた男が、両拳を固めて座っていた。不服を訴える男性よりは、一回りほど年齢が上のようだ。若者の不服を正面から受け止めても、その表情はぴくりとも動かない。
その隣で直立不動で立っていたもう一人の軍服の男性―――こちらの男は、髪に白いものが混じっており、デスクの男よりも齢を重ねていそうである―――が、ちらりと問題の書類を見やる。

”BLUELY SKYMAN”

オーシア国籍、ベルカ系オーシア人。
その横に、数センチの小さな写真が縦長にトリミングされている。
アッシュブロンドの髪に、色素の薄い灰色の瞳。彫りの深い顔立ちだが、これといって特徴のない、平凡な顔つきをしていた。
”スマイル”でも”テンス”でもなく、ただそこには瞳と眉と口が、均等に据え置かれて居た。ただ、それだけの表情。

「・・・貴官は彼の何が気に入らないのだね?」
そんな若者の顔を真正面から見上げ、デスクの男が言葉を発する。
「―――」
若者は言葉に出すべきかどうか口をあけたまま迷っていたようだが、やがて意を決してその意思を告げる。
「このような、ふざけた名前のパイロットを―――しかもよりによって、隊長として―――雇うのですか」
横に静かに控えていた年配の男がちらりと若者の顔に視線を滑らせる。
「我が軍はこんな胡散臭い傭兵に頼らなければならないほど、人に困っているのですか!・・・」
ついに、若者はデスクに両手をつく。ぎゅっと寄せられた眉間のしわに、デスクが軽く悲鳴をあげる。
そんな若者の視線を相変わらず真正面から受け止めたまま、その男はデスクに置いていた両の拳を顎の前で組み合わせる。
そして口以外の僅かな動きすら許さずに、一語一語区切るようにはっきりと言った。

「わが国は、今やそれほどまでに追い詰められているのだよ、―――ハロルド少佐。」







肩を怒らせて敬礼を終えた青年が部屋を後にするまで、ものの数秒と時間はかからなかった。
バタン、とやや配慮なしに閉められた扉が部屋の静寂を誇張する。
「・・・彼も少し生真面目でいけない」
デスクに座っていた男が、やっとその頬を動かす。
「仰る通りで」
未だ隣に立ったままの白髪交じりの男も、息を抜きやや肩をすくめながら同意する。
「いや、だが―――」
デスクの男が何かを思い出したように視線を宙にさ迷わせる。
あの男が初めてこの基地にやってきたとき。
そして、そこらを歩いていた整備兵を捕まえ、案内させてこの部屋にやってきたとき。
彼は部屋に入り、挨拶代わりの敬礼を済ますと、一直線にデスク前まで歩いてきた。そして、ペンを貸してくれと無言で要求する。
ただでさえ部隊の再編でクソ忙しいのに、という思いと、何を始めるつもりだ?という、懐疑的な好奇心が複雑に絡まりあい、気付けば彼はその闖入者にペンを差し出してしまっていた。
好き放題に散らばる書類群から一枚抜き出すと、受け取ったペンで彼は堂々と一文を書きなぐる。
それには、ヘタクソな大文字で、こう書かれていた。


”私は喋れません”

”ですが、必ずお役に立てます。
―――必ず”



デスクの男は、記憶を手繰り寄せ、その日から何度目になるか―――肩を大きくすくめた。
「とんでもない男だよ。ラッシュの紹介でなければ今頃銃をつきつけて追い返しているところだ」
そんなデスクの男の傍らで、白髪雑じりの男が隅の引き出しから数枚の書類―――彼が持参してきた履歴書、及び別口からの推薦書―――を引き出してきて、パラパラとそれをめくりながら呟く。
「ですが、戦歴を見る限り―――なかなかの腕前のようです。最近はオーシアで航空会社に整備員として勤務、その前はユークの紛争地帯で小隊の隊長を務めているとか。」
「少なくとも、隊長になれるほどの器量と腕前はあるらしいな。」
そして、男は前かがみになっていた背筋を背もたれに預けて息を吐く。
「まぁ、フォルク少尉もあれでなかなか傭兵らしく、一癖もふた癖もある男だからな。曲者同士で丁度よかろう。―――チンピラどものことだ。まともな編隊を組むとは思えん」
「左様で」
同意し、何故か後ろに控えたままの男が視線を宙にさ迷わす。
「―――誠に絶妙な、取合せで。」
デスクの男の短い鼻息が、静かな室内に吹き出される。
―――口元は、片方だけが皮肉にも吊り上がっていた。






山の日が落ちるのは早い。
まだ太陽が夕焼け色になりきらないうちに、眩しく山々の陰に隠れる。
ほんのり茜色に染まった空に、方々からやってきた鉄の鳥が舞い降りたり飛び出したりと、このヴァレー空軍基地は過去最高の盛況を迎えていた。
そんな他の機体を尻目に、自分の休んでいる機体の整備をざっと終え、俺は格納庫から出るべく足を踏み出す。
その時、何の気なしに踏み出した足の反対側―――同じハンガーに収納されている誰かの機体に、偶然目が留まった。

垂直尾翼が紺色の、俺と同じF-15C。
イーグルだった。

(傭兵でイーグルに乗る奴が他にもいたんだな)
その機体はまだ新しいのか、汚れらしい汚れもない綺麗なボディをしていた。
俺は自分の機体と同じだからか、なんとなく興味を持ってその機体を眺めながら格納庫を出ようとする。
「ピクシーさん、前見て歩いてくださいよ!」
唐突にかけられた声に、俺ははっと我に返って道を譲る。
重そうな何かの検査道具を二人掛かりで持った整備員が、ふらふらと歩いていた俺にぶつかりそうになりながら通り抜けていく。
「悪い」
つい集中して眺めてしまっていた自分に苦笑しつつ謝った俺は、もののついでにそいつらに聞いてみることにする。
「ところで、そのべっぴんなイーグルは誰のだ?昨日までここは空だったはずだが」
「今日新しく来た人のですよ。僕らお二人の機つきになったんスよ」

お二人の機つき?

多くの場合、整備員は大抵、ひとつの隊の機体をひとつの整備班が担当する。
ってことは何か?短い付き合いだった前の傭兵の代わりに、誰か新しい奴がやってきたってことか。
俺は口を引き結んだまま、首の後ろをさする。
(長く付き合える奴だといいんだがな。)
そんな俺に、先ほどの整備兵が再び声をかける。
「―――ああそうだ、ロルフ伍長がピクシーさんを探してましたよ。なんでも、紹介しなきゃいけない人がいるとかなんとか。・・・この機体の持ち主さんですかね?」
「・・・かもな」
俺は軽く肩をすくめると、用が無くなった格納庫から足を踏み出す。
見上げた空は、ほんのり茜色に染まり、大気は肌がぴりりと凍るほどに冷たかった。

―――いい空だ。

そんな空に、思わず口元の緩んだ俺の視線の先で何かが舞い落ちていく。
最初は、どこかの誰かが機体を飛ばしているのかと思った。だが、それにしては妙な機動をしている。
その機動に引き寄せられるように目で追っていると、ほどなくそれは夕日の中を風に乗って飛ぶ一枚の紙飛行機であることに気付く。
(誰だ、空軍基地で紙飛行機なんぞ飛ばす酔狂な野郎は。)
紙飛行機のやってきた方向を辿って見れば、果たして管制塔の上、梯子の先に誰かが鎮座して、飛び行く紙飛行機を眺めているのを見つけることが出来た。
服装はミリタリージャケットにミリタリーパンツ、足元はコンバットブーツで、この空軍基地ではこれといった特徴のない、いたって普通の格好をしていた。左手に持った煙草が、紫色の煙を橙の空に立ち昇らせている。
そんないでたちの酔狂な野郎が、視線に気付いたのか、シガーを口元で結わえながら、ふとこちらを振り返った。

夕日に当てられて橙色に輝くブロンドの髪。細められた色素の薄い瞳が、俺の顔を映す。

俺は、その瞳から目が離せなかった。
だが時間にしたらほんの一瞬だったのだろう、その男はすぐに俺から目を外すと、手元でなにやらごそごそ作業を始める。
そして暫くして出来上がったものを右手に挟み、スナップを利かせて風に乗せるように―――飛ばした。

新たに命を与えられた白い紙飛行機は、橙の空の中を標高3000Mの山々に向かって風を切りながら、見えなくなるまでどこまでも遠くに飛んでいく。
その紙飛行機をじっと見届けると、男は何処から持ち出してきたのか、再び次の紙を折りだした。
そして繰り返し繰り返し白い飛行機を折っては、遥か外界の山々に飛ばし続ける。
俺はなんとなく目が離せなくなり、格納庫の脇で一緒になってそれをぼんやり眺めていた。

俺が見始めてから、丁度4枚目の紙飛行機をその男が飛ばそうとしていたときだったろうか。
「ッあーーーーーー!!!!」
離着陸で騒々しい滑走路に負けない大声で、誰かが叫んだ。
俺はとっさに身構えつつ振り向く。事故でも起こったか?
振り向いた俺のその視界のど真ん中、目がバッチリ合う位置に、大口を開け、こわばった表情でこちらを睨みつけている―――恐らく声の主であろう―――人物の姿が飛び込んできた。
栗毛の髪に、少し幼さの残る顔立ち。背は俺よりやや低いくらいか。こちらはブルーグレイのつなぎの下にハイネックの中着を着込み、頭にはきっちりと正規軍のものである帽子を被っていた。階級は伍長。
そしてその少年は、俺の方へと怒りを踏みしめながらやってくると、周囲のエンジン音に負けない大声で怒鳴るようにして言う。
「フォルクさん探したんですよ!っていうかサイファーさんも探してたんですよ!どうしてみんな勝手にこうどっかいっちゃうんですか!」
「いや俺は声も掛けられてないが・・・」
「探・し・て・た・ん・です!―――いやフォルクさんは悪くないと思います、はい、ってわけでここで待っててくださいね!あのてっぺんの人を連れ戻してきますからねッ」
どうやら、あの高いところ好きな煙の男は”サイファー”と言うらしかった。
俺は肩を怒らせて足を踏み出そうとする少年の背中に声を掛ける。
「おいちょっと待て、あの男はまさか―――」
「まさかなんですか?」
「・・・俺の相棒になる奴じゃないだろうな?」
「相棒?」
「僚機」
言い直してやると、少年はなるほどというように頷いて、「そうです」と短く返す。
「僕は大佐から、スカ―――いやあの方をフォルク少尉に直々にご挨拶させるように、と仰せつかりまして―――」
「それなら話は早い。会って話をしておくよ。ご苦労様」
「そういうわけにいきません!ちゃんとお会いしていただくのが僕の役目としていただいた任務ですので、きちんとお二人が直接―――」
ワンワンと響く鼓膜を片手で押さえ、俺は困って口をへの字に曲げる。
「わかった、参った。行くよ、一緒に行く」
少年―――恐らくロルフ伍長は、その大きな瞳を満足げにほころばせ、ニッコリと頷いた。



俺たちが奴の居る管制塔の外部梯子の真下にたどり着くまで、サイファーとやらは紙飛行機を片手にこちらを目で追っていたようだが、一向に降りてくる気配はなかった。
「大体どうやって昇ったんですかあんなとこ・・・」
ロルフ少年はほとほと呆れたように片手を額に管制塔を見上げる。
「サイファーとやらはどうやら相当の変わり者らしいな」
するとロルフ少年はし~っと指を口に当てて小声で囁く。
「ここだけの話ですよ、彼が出てきたときの司令官どのの顔といったら。はちみつとマスタードを一緒に飲み込んだみたいな顔してましたよ。僕、人間あんな表情もできるんかと驚きました」
その顔を想像して、俺は小さく吹き出す。
あのお堅い司令官殿にそんな顔をさせるとは。
そのときだった。管制塔の上部スピーカーから、管制官の声が流れる。
≪こちら管制塔。管制塔上部、及び梯子前の者に告ぐ。直ちにそこから退きなさい。ここは展望台ではない。繰り返す、直ちに退きなさい≫
声音は、お怒りだった。

「僕まで怒られたじゃないですか!」
梯子から降りてきたサイファーとやらにむかって、ロルフ少年が真っ先に涙目で訴える。
「なんで勝手にどっか行っちゃうんですか!」
少年のなじりもものともせず、サイファーは片手に紙飛行機を持ったまま、俺のほうに顔を向けていた。
「ッあーーーーーーーーー!!!!」
本日二度目の叫び。
「それ、僕がコピーした就業規則じゃないですか・・・!・・・・」
どうやら、サイファーが躍起になって飛ばしていた紙飛行機は、何かの書類だったらしい。俺はいたたまれなくなってさりげなく二人から目線をそらした。
サイファーはとりあえず右手に持った紙飛行機を見やるものの、元に戻そう、謝ろうという努力の片鱗すら見せず、ただ無言で突っ立っていた。
「とにかく、僕はお二人をご紹介しましたからね!ああ、こちらはラリー・フォルク少尉、こちらはブルーリィ・スカイマン少尉です、お二人で小隊を組んでいただく予定だそうです。それでは、僕はこれでっ」
そんなリアクションがますます少年の気に触れたのか、彼はまくし立てるようにして説明を終えると、肩を怒らせながら歩み去っていった。
少年が去って、暫く無言の空間が続く。
「・・・・まぁ、なんだ」
俺もさすがにいたたまれなくなって、間を繋ぐ。
「宜しくな」
俺の差し出した右手に、サイファーは僅かに微笑んで、左手で握手を返した。

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